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■青天の霹靂2
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「花緒さんは何時も明るく、職場に咲く花のようです。」

 12月始めの日曜日。会社の後輩が結婚式を挙げた。
 村西花緒は23歳。相手の恭ちゃんは27歳。私は花緒の上司として、お祝いの言葉を言う。

 青木美恵子。今月半ばで28歳がきてしまう、川岸石油天神町SS所長。
 仕事に明け暮れる独身者。…好きで仕事ばっかりしてるわけじゃ無いけど。

 夏の始めに前所長が体調を崩して退社。
 繰り上がりで主任やってた私が所長。
 1人抜けた穴を埋める為に走りまわって10月にやっと新入社員が入ったところなのに、今年いっぱいで花緒が寿退社する。
 めでたい事なんだけどね、…素直に喜べないっていうか、なんと言うか…。

 決して仕事が嫌いなわけではない。でもね、いろいろあるのよ。



「あんたより、五つも下の子の、結婚式だったんでしょ。相手の子は?」

 式が終わって、家に帰ると母親が苦笑いしながら言う。

「私より、1つ下。」

「夏樹ちゃんも結婚したのに、なんであんただけ残ってるのかねぇ。」

 母親はそう言うと、ふぅと溜息をつく。

 唯一、同い年で独身だった親友夏樹は、この六月に結婚した。私の周りで独身者はいなくなってしまった。

「私があんたの歳には、もうあんたは産まれていたよ。」

 …そのセリフ、もう聞き飽きてるよ。



 確かに、ずーっと独り者で、恋人の一人さえいない私だったけど、一応、今はお付き合いしている人がいるのだ。
 けっこう男前で、そこそこ背は高くて、明るくていい奴。

「美恵子ー、長町くん来てるわよー。」

 母親の呼ぶ声が聞こえる。

 長町健二。それが私の彼氏の名前。1つ年上の29歳。今日、ご飯食べにいく約束してたんだけど…え?もう来たの?

 二階の自室で慌ただしく仕度して、一階に降りて行くと、母親と長町さんが和んでいる。
 知り合って6ヶ月、付き合い始めて5ヶ月。その間に何度か家に来た長町さんは、すっかり母親のお気に入り。

 もともと長町さんは、夏樹の旦那さんの、白石くんのお友達。知り合ったのだって、六月の夏樹の結婚式。
 第一印象もそこそこ良くって、自己紹介まではすんなりいった。
 仕事の話さえ、しなければ。

 長町さんと私は同業者。しかも仕事場はものすごく近い。
 そして、ものすごく仲の悪い会社…。

 私の勤める川岸石油と、長町さんの大和石油は社長同志の仲が悪く、私も大和石油が大っ嫌いだった。
 特に同じ天神町にあるSS。長町さんがそこの所長だとわかってからは、私達の仲も険悪だったんだけど、それももう昔のこと。
 今はそんなこと気にせず、長町さんとの仲は上手くいっている。ただ、職場のみんなには内緒だけど。


「結婚式。どうだった?」

 ご飯食べながら、長町さんがたずねてくる。今日はめずらしく、ちょっとリッチなレストラン。いつもは職場近くの居酒屋だからね。

「若かった。私の席は社長や常務と一緒で、おじさんばっかりだったけど。」

 私がそう答えると、長町さんは笑いながら、

「会社の後輩だと、仕方ないよなー。とくに20代前半の奴らだと。俺ら、四捨五入したら30だし。」

そう言う。

「そうよ、私今月で28が来るもの。花緒なんてまだ23。その友達も23だもんね。」

 そう言って私は溜息を1つつく。
 別にいいんだけどね。もうこの歳になれば、焦りも何もない。24から25になる時はちょっと悲しかったけど、その後は26も27も、28だって一緒。今更気にしたって仕方が無い。

「まぁ…そうだよな。」

 長町さんはそう言って、深呼吸を1つする。

「あのな。」

 そして一息おいて、

「結婚…しないか?」


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あきゅろす。
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