■青天の霹靂
8
―ピリピリピリ―
枕元に置いてある携帯電話の鳴る音で、私は目を覚ました。
仕事は休み。ゆっくり朝寝が出来ると思ってたのに…誰だ、こんな朝早く。
手を伸ばして電話を取り、表示パネルを見る。番号通知は見覚えのある番号…。会社か。
「もしもし。」
寝起きの低い声で電話を取ると、
『おはようございます、村西です。』
という、花緒の声が聞こえてきた。
『主任、寝てました?』
「寝てたわよ、休みだもん。で、何かあったの?」
会社から電話ってことは、何かトラブルがあったとか、そういうことがほとんど。
なんで私にかけてくるんだ?うちの店にはれっきとした、所長という人物がいるのに。
『その所長がですね、入院したみたいなんです。』
と、花緒は言った。何だと?!
『詳しいことはあたしもわかんないんですけど、とりあえず市民病院に入院してるそうなんです。常務も行くとか言ってましたんで、主任もちょっと様子見てきてくれませんか?』
次から次へと、何でこう問題が起こるんだ?所長が入院なんて、店のトップがいないと何かと大変だし、長期入院となってくると仕事のローテーションも狂ってくるのに…。
でも、一応所長の容態も気になるので、私は病院へと向かった。
「主任、休みやったのに、すまんのー。」
所長は私が行くと、ちょっと疲れた笑顔でそう言った。
となりには山下常務がいる。社長の弟で、うちの会社で二番目に偉い奴。
「青木、店の方は大丈夫なのか?」
その山下常務が、私に言う。
「はい。村西さんとアルバイトとで、なんとかなるそうです。」
あたしが言ったあと、常務は所長に向かって、
「なんとかなるそうだ。天神町はみんなしっかりしてて、よかったな西本君。じゃ、わしは先に失礼させてもらう。ゆっくり休めよ。」
と、笑顔で言う。そして再び私の方を向き、
「青木、ちょっと話がある。」
そう言って、私を廊下へと連れ出した。
「西本君な、ちょっとよくないらしくて、長期入院ってことになるそうなんだ。」
常務は小声でそう言う。そして続けた。
「そこでだ、所長代理ってことで青木、お前が天神町をしきってくれ。」
何だって?!所長代理?!!
「わ、私がですか?」
「お前以外に誰がいるんだ?天神町はうちでも大きい所だから、慣れていないと大変なんだ。ま、よろしく頼むぞ。」
山下常務はそれだけ言い残して、逃げるように去って行った。
そ、そんなー。
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