■青天の霹靂
6
「確かに、仕事の面では男らしいかもね。」
夏樹がコーヒーを入れながら言う。
新婚旅行から帰ってきて、土産をやるから取りに来いとの電話を受けたのが昨日。早速次の日、仕事が終わったその足で、夏樹と白石君の新居にお邪魔してる。
「男らしいかぁ。それってかわいげが無いよね。」
私が呟くと、夏樹は笑いながら、
「かわいげが無いかもしれないけど、仕事上でしょ?しっかりしてるってことよ。かわいげがあって、役に立たないよりずっとイイじゃない。」
そう言った。確かにその通りだ。
「あたしだって美恵子とかわんないわよ、仕事上では。さすがに男らしいといわれた事はなかったけど。」
夏樹はついこの間まで看護婦さんだった。後輩からは恐れられつつ、慕われていて、ドクターからも一目置かれていた鬼(?)看護婦。
確かにかわいげのある看護婦ではない。
「じゃあ、夏樹が片付いて、私が未だに独り身の理由は?」
私が夏樹に問い掛けると、夏樹は困った顔をして、
「…男運…かな?」
と、答えやがった。このやろう、人が一番気にしてる事を。
「で、でも。この間いい雰囲気だったじゃない。なん
て人だっけ、佳隆の友達の…。」
夏樹がそう言って思い出した。
「そうよ!夏樹、白石君は?」
私が叫ぶように言うと、夏樹は驚いたように,
「え?確か友達迎えに行くとか言ってたけど…。」
とだけ、答えた。
「あの紹介してくれた友達って、大和石油の所長だったのよ。しかも天神町の!」
「えー、じゃあ、思いっきり商売敵…。」
夏樹も驚いて声を上げる。
今まで散々、夏樹には仕事の話をしてきたから、川岸と大和の仲の悪さは夏樹もよく知ってる。
「同業者ってだけなら良かったのよ、仕事の話で盛り上がったりするし。仕事場聞いてからは敵としてしか思えないのよ。きっと向こうも同じだと思うけど。最初はいい雰囲気だったわよ……。」
私がそれから、この間の二次会の時の話を夏樹に熱弁していると、
「ただいまー。」
玄関から白石君の声がする。そして、
「お邪魔しまーす。」
との声と共に、白石君の後ろから現れたのは…商売敵!
白石君と夏樹が同時に『しまった』というような顔をした。ってことは、向こうも私と同じようなことを白石君に言ってるんだ。
白石君と夏樹、そして私と商売敵。四人でコーヒー飲みながら、雑談…てなことになるんだろうけど、どう考えてもお通夜みたいな雰囲気だ。
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