■青天の霹靂 10 数日後。昼から出勤すると、花緒がにこにこと近づいてきた。 「おはよーございます、主任。本社から辞令が来てますよ。」 そう言って一枚のFAXを渡してくる。 ―天神町SS主任、青木美恵子 7月1日を以って天神町SS所長に任命する― …ついに来たか。 この間、常務にそれとなく言われてたから、驚きはしないけど…正直言ってめんどくさい。 でも、私が所長ってことは、現所長はどうなるんだ? 私はもう一度、その紙をよく見る。私の辞令の下に、もう一つ。 ―退職 天神町SS 西本重弘所長 6月30日を以って依願退職とする― 「えー!!」 私は思わず叫び声をあげた。 「所長、辞めちゃうんですね。そんなに身体悪いのかな?この間まで元気だったのに。」 花緒が言う。私もそんな話、聞いてないぞ。 その時。タイミングよく山下常務が現れた。 「おー、おはよーさん。」 なんてのん気に。私はそんな常務に突っかかって行った。 「常務!どういう事ですか?これ。」 と、さっきの辞令を突きつける。 「あ、それな。西本君、下手すりゃ定年の来年まで、入院するかもしれないんだ。だから引退して、あとは青木に任すって言ってたぞ。」 任すって言ったって…こんな大きいSS、いきなり任せられても…。 他のSSの所長の方が、よっぽど良いんじゃないの? 事実上責任者と、実際責任者では、立場も仕事内容も全然違うし、何より文字通り、全責任がかかってくるわけで…。 しかも西本所長抜きで! ここしばらく、所長代理という事で、色々な仕事をしてきたけれど、いざという時には所長がいた。 分からなかったら教えてもらったり、手伝ってもらったり。それをなくして、私一人がやらなきゃならんのか? 「青木、こんな事頼めるの、お前だけなんだ。他の奴には任せられない。西本君からも、そう言われてるしな。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |