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藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編)
7
さて、今は幼稚園のお料理の時間である。今日作るものはゼリーだ。あらかじめ先生が作ってくれている3種類のゼリー液から好きなものを選んで、好きなもの具材を入れるという至極簡単なものだ。
元々私は料理が苦手ではない。前世では友人達にはよく振舞っていたし、食の細い人達も私の作ったものは食べてくれた。
しかし新しいものとなると話は別だ。作れないことはないだろうが経験がないためわからない。興味津々に鍋を混ぜる先生達を眺める。
私のいるテーブルが呼ばれて先生達の前に並ぶ。赤、黄、青の3種類のゼリー液。匂いからして味はすべて同じようだ。先生に頼んで赤と青を半分ずつ入れてもらう。前にいた男の子も全部混ぜてもらっていたので大丈夫だろう。(しかし彼のゼリーの色は悲惨だった)
紫色になった自分のゼリーを見ながら席に戻り、適当に星型のナタデココを3つ程入れたところで隣に座っていた女の子が話しかけてきた。
…たしかハルちゃんと言った気がする。

「ねぇ、名前ちゃんはゼリー誰にあげるの?」

はて、何故自分のゼリーを渡すのか。首を傾げるとハルちゃんはえーっ!と言ってこちらにぐいっと寄ってきた。

「名前ちゃん知らないの?今日作ったゼリーは女の子好きな男の子に渡すんだよー。おねーちゃんの頃もそうだったみたいだからずっと決まってるんだよー。」

前から話してたのにー!とむくれられるがそんな話を聞いたような聞いていないような。でも自分の分をあげてしまったら私はゼリーを食べられないではないか。

「ハルはね、隣のクラスのミキくんにあげるんだ!ミキくんサッカー習っててね、足がとっても早いんだよ!それにね…」

恋は盲目というやつか。弾丸トークをし続けるハルちゃんはよほどそのミキくんとやらが好きなのだろう、かっこいい所をどんどん挙げていく。そのうち他の女の子も集まってきて恋バナというものが始まった。
男の子たちは男の子たちで固まって気まずそうにしているのが何とも面白い。
時折相手をチラチラと見ながら男の子の話をする女の子という図は昔から変わらないものだ。
意外だったことに精市の名前も何度も出てきた。精市はどうやら女の子から人気があるようだ。
適当に相槌を打っているうちにゼリーが固まったらしく、持ち帰りの袋に入ったゼリーを先生が配ってくれる。綺麗に紫色になったゼリーに満足して鞄にしまう。
今日はこれで帰りなので精市を探すと何人か女の子にゼリーを渡されている。
これは時間がかかると見て今日のお迎えである聖子さんのところへ行く。精市の状況を説明して聖子さんとおしゃべりしながら待つ。

「もう、置いていかないでよ。」

暫くするとムスッとした精市がこちらにやってきた。ゼリーを沢山貰ったようで鞄から袋がはみ出ている。
そのまま精市の家にお邪魔する。ぬるくなってしまったゼリーを10分ほど冷やしてから取り出す。食べようとスプーンを持ったところで精市にゼリーを奪われた。

「む!何をするのだ。それは私のゼリーだぞ。精市には自分の分があるではないか。」

と言うが精市はゼリーを返す様子がない。不審に思っていると今度は私に精市の分をずいっと差し出してくる。とりあえず受け取るが意図が掴めず困っていると精市に問われる。

「今日のゼリーってさ、女の子が好きな男の子にあげるものなんでしょ?」

「うむ。そのようだな。」

ハルちゃんの話を思い出し頷いた。

「名前は俺にくれるんじゃないの…?」

「確かに精市は好きだ。」

そう言うと目を輝かせてこちらを見る。

「じゃあ…!」

「しかし私はゼリーが食べたい。あげてしまっては自分の分がなくってしまうだろう?だからそれはあげられないぞ。」

そう言うと精市は不服そうな顔をしたが、なにか思いついたのか、あ!と言って私の手にある精市のゼリーをさらにぐいっと押し付けてきた。

「じゃあさ、俺のを名前にあげるよ。俺どうしても名前のゼリーが欲しいんだ。」

ダメ?といって上目遣いでこちらを見る精市にまあ代わりにくれるというのならいいかと自分のを差し出した。

「ありがとう!あ、この色って名前の色だね!」

といって精市は光にゼリーを透かす。確かに白っぽい光に透かすと藤色のように見える。

満足そうにゼリーを食べだす精市を見て、私もスプーンを口に運んだ。

舌に乗ったゼリーは甘ったるく溶けていった。

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あきゅろす。
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