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藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編)
1
周りが光に満ちた。私があの日死んでから次に瞳を開いた時、初めて見たのはこちらに微笑む女性であった。理解し難い状況の中、私の口から出たのはとんでもないものであった。

「おぎゃあ」

気を失いかけたのを覚えている。何を思ったか、今の自分は赤子のようだ。必死に考え、私は悟った。私は輪廻転生をしたのだろうと。あの時は動転していたのだろう。よくそんな浮世離れしたことを思えたものだ。しかし私を愛おしそうに見つめ、涙を流す私の両親であろう二人を見て腹を括った。この世に再び生を受けたのだ。豊臣の名に恥じぬよう生きるしかないだろう。私とて武士だ。生半可な覚悟など決めぬ。いつか三成立ちに会えたら、二度めの生の話を沢山してやろう。こうして私は自分の二度めの生を受け入れたのだった。

…当面の問題はオムツだろうな。


月日が経ち、私は4歳になった。この頃になって分かったことがあった。どうやらここは私が死んでから400年後の日ノ本らしい。今の日本は平和なようだ。きっと家康は頑張ったのだろう。あの家康のことだ、戦の後はわたしたちのことをずっと考え、ずっと苦しんだのだろう。確かに天下分け目の大戦をしたが、私は家康を憎んだりなどしていない。むしろ素晴らしい、自慢の仲間の1人であると心の底から言える。私たちが戦をしたのは日ノ本についてのことである。私たちの間にある、家康風に言えば絆というものは家康に限らず、敵対した者とも、もちろん同じ側で戦った者とも、誰とも切れたりなどしていない。家康に会うことがあればこの平和な国を作り上げた苦労話でも聞いてやろう。…とまあこんなことばかり考えていたからか、この年で歴史書や武具の本ばかり欲しがったからか、私はなかなかに変わり者になってしまったようである。話し方も態度も他の子とはズレてしまっている。でも仕方が無いだろう、元々私は大人であった上に戦国の人だったのだから。戻すに戻せないのだ。幸い私の両親は所詮
親バカといったものであり私を溺愛してくれているためにこれを負の感情で見られたことは無い。

「名前は賢くていい子ね。自慢の娘よ。愛しているわ、名前」

「ああ。素晴らしい娘だ。愛しているぞ、名前」

めいいっぱい愛を与えてくれる両親を持つことのなんて幸せなことだろうか。だから私も両親に向けて普段はあまり表情豊かとはいえぬ自分の顔を満面の笑みにしてこう答えるのだ。
「ちちうえ、ははうえ。わたしも愛しております。」



そしてこの頃、私には初めての友達、幼馴染という関係になるであろう人物と出会うのである。

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