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藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編)
2
「ゆ、ゆきむらせーいちです」そう言って私と母にぺこりと頭を下げたのが私が彼を初めて見た瞬間であった。

私が母に紹介したい人がいると言われたのは3日前のことである。なんでも学生時代の親友が近所に引っ越してきたのだそうだ。その人には私と同い年の息子さんがいるらしい。私に友達がいないから心配でもしたのだろうか?そう思うと少し落ち込んでしまう。

「その子はね精市くんっていうんだけど、人見知りらしくて。名前もお友達が出来ることだし丁度いいと思って。」

なるほど、精市くんとやらは人見知りなのか。私なんかで友になれるものだろうか。不安である。しかし私にとって今世初の友が出来るかもしれないのである。高鳴る胸をそのままに私はその日を迎えたのであった。


…なんとまあ、可愛らしいお家だ。南蛮風のお家の庭には色とりどりの花が咲いている。和を基調とした我が家とは違うその家が興味を惹き、ついじっと見つめてしまう。
母がインターホンを押すと暫くしてがちゃりと音がしてドアが開いた。

「いらっしゃい!待ってたのよ。」

そう言って出てきたのは藍色の髪の綺麗な女の人だった。この人が母の親友なのだろう。

「おはつにおめにかかります。苗字名前ともうします。」

そういうと女性は少し驚いたあとに優しく微笑んだ。

「あら、あなたが名前ちゃんね。とっても礼儀正しいのね。私はあなたのお母さんの友達の幸村聖子よ。よろしくね。」

そう言って彼女は私の頭を撫でたのであった。

私と母が中に通してもらうとそこには男の子が一人いた。

「精市、言っていた名前ちゃんよ。ご挨拶なさい。名前ちゃん、この子が息子の精市よ。」

こちらを向いた男の子は暫く固まってから荒てたように立ち上がった。

「ゆ、ゆきむらせーいちです。」

そう言うと彼は恥ずかしそうにぺこりと頭を下げた。
私も先ほどしたのと同じ挨拶を彼に返す。
そうこうしている間に母同士も挨拶を終えたらしく、2人で話すからと言ってダイニングでお茶を飲み始めてしまった。
私と精市くん2人だけで取り残されたがはてどうしたものか…。初対面の幼子2人、どう出ていいか分からない。とりあえず何か話さなければ。

「精市くん」
「っ! な、なに…?」

…なんだかとてもビックリされてしまったが返答がきたということは会話を続けてもいいらしい。

「精市くんはおはながすきなのか?にわにたくさんさいていた。」

「!うっ、うん!おれ、はなだいすきなんだ!」

精市くんは瞳を輝かせてそう答えると私の手を取った。

「名前ちゃん!おれのはなをみてよ!すごくきれいにさいてるんだ!」

庭に出て精市くんと花を見る。嬉しそうに教えてくれる彼はよほど花が好きなのであろう。そんな彼を見るとついつい私も笑みがこぼれてしまう。
ちなみに話しているうちに分かったことだが精市くんと私は同じ幼稚園に通うらしい。
ふと、精市くんがこちらを見た。

「名前ちゃんはすきなはなってある?」

「ああ。藤というはななのだが…。しってるか?」

「藤?うーん…。わからないや。ずかんにのってるかな?」

「多分のっている。とてもうつくしいはなだ。よければみてみてくれ。」

「うん!名前ちゃんがいうんだからきっとすごくきれいなんだね!みてみたいなあ、藤!」

「ああ、きっと精市くんもきにいってくれるだろう。藤のきせつになったらともにみにいこうか。」

「…っ!うんっ!」

「精市ー!名前ちゃーん!そろそろおやつにしましょうー?」

その後は精市くんのお母様に呼ばれて共におやつを食べた。その間も精市くんは私にベッタリとくっついていた。どうやら気に入られてしまったらしい。帰り際も精市くんが駄々をこねた。近所だし幼稚園も同じなのだから毎日会えると約束してやっとこさ家に帰った。出会って1日だというのにあんなに仲良くしてくれるだなんて、この世は人の縁に関する運がいいのかもしれない。
そうして私の初友人の乱は幕を閉じた。

…彼が人見知りというのは嘘だと思う。

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