藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編) 10 小学生になった。 小学校も精市と同じところだ。入学式でクラスが別れたと知った時の精市は物凄く不機嫌だった。 そのまま2年、3年と過ぎ現在4年生。今まで1度も同じクラスになっていないのはもう運命だろう。そんなことを言うとまた拗ねてしまうので言わないが。 小学校4年生ともなると思春期というものに入るようで女の子は女の子同士で、男の子は男の子同士で固まることが多くなる。 そして女の子の話題の中心は常に恋の話題である。 私のクラスでは休み時間になるとクラスの女の子全員ほぼ強制参加の恋バナが始まる。 恋愛に疎い私はいつも聞き手なのだが、うっすらと頬を染めて想い人について語る乙女の姿は何とも微笑ましい。謙信様を語るかすがの姿を思い出す。 そして話題にはいつも精市が出てくる。確かに精市は整った顔をしている。あと数年もすれば女の子に囲まれることだろう。 幼馴染としてなんだか少し誇らしい。 そのことを精市に言ってみると微妙な顔をされた。精市はまだ恋愛に興味が無いのだろう。 そんな感じで楽しい日々を過ごしていたある日。部屋で本を読んでいると両親に呼ばれた。 「父上、母上。大事なお話とは一体。」 「…実はお父さんな、秋から仕事でドイツに行くことになったんだ。」 「ドイツ…」 「ああ。それで名前にもな、着いてきてもらうことになる。急な事で本当にすまない。」 そう言って父はばっと頭を下げる。 急な事で困惑する。 しかし仕事なのだ。仕方がない。第一、小学生の私が言ったところでどうしようもない。 「頭を下げないでください、父上。仕事なのだから仕方ありますまい。」 「ありがとう。引越しは一月後だ。準備をしておいてくれ。」 「わかりました。」 そう言って早速準備を始めようと席を立つ。 引越し…。 私のことはいいのだが、精市のことが気がかりだ。 クラスが離れただけであんな顔をする彼のことだ。きっと受け入れて貰えないだろう。 どう伝えるか…と考えながら部屋を整理し始めた。 [*前へ] |