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藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編)
9
side跡部

その日は両親と共に招待を受けたブレナム宮殿に来ていた。ここには何度か来たことがあるがまだ6歳の俺にとっては何もせずにバロック様式を眺める趣味なんてない。ゲストとして人前ではしっかりとした態度でいるが、内心テニスのことしか考えていない。

挨拶をしながら公爵自慢の庭を見せられる。ぼーっと見つめているとその姿が熱心に見ているようにでも見えたのか興味があるのかと尋ねられた。ぶっちゃけ興味なんてさらさらない。
…そうだ。

“Yes. Recently I had the chance to see flower paintings. I do not have such a wonderful garden, so I'd like to see it.
(はい。最近花の絵を見る機会がありましたもので。こんなに立派な庭はなかなかないので見てみたいですね。)”

こんなことを言っておけば公爵は感心したようで俺に庭を見てくるといいと勧めてくれた。この後は仕事の話でもするのであろう両親から許可が降りると俺は庭の方に歩いた。脱出成功だ。

薔薇の咲く道を適当に歩く。
どこかのベンチにでも座ろうと歩いていると目の前に人影が現れた。
この宮殿は観光客にも公開しているがここは立ち入り禁止のはず。

“ Hey!(おい!)”

そう声をかけると相手はくるりとこちらを向いた。その瞬間はっとした。
相手は物語のなかの姫のように美しい少女だった。
俺と彼女の間を風が通り抜け、イギリスの曇り空の下で尚輝く銀色の髪を揺らした。

“What are you doing here.?You should not go out of here.(ここで何してるんだ?ここは立ち入り禁止のはずだ。) ”

そう言うと彼女は慌てて鞄から本を取り出した。

“I'm lost.(迷子)”

ページを必死に捲ってそう答える。その本を見ると文字は日本語で書いてある。

「アーン?もしかしてお前日本人か?」

尋ねると彼女は目を丸くした。

「む?其方は日本語が話せるのか?」

「ってゆーか俺様も日本人だ。」

そう言うとほっとしたように息をついた。
…なんか変わった話し方だな。

「そうであったか。失礼した。
ところで入り口はどちらだろうか?先程言った通り迷ってしまってな。入り口にいれば両親と合流できるかと思ったのだが。」

「ああ、そういえばそうだったな。
…ふむ。よしいいぜ!俺様が連れて行ってやるよ。」

1人でぼーっとするよりも彼女といた方が面白そうだと判断し答える。

「真か!忝ない!」

忝ないって初めて聞いたぞ…。
面白いと口角を上げて彼女の手を取る。

「よし、ほら行くぞ。」

歩きながら話をする。彼女は両親と共に旅行出来ているらしい。俺が抜け出してきたことを聞いた彼女が案外ずる賢いんだなと言ったのには笑ってしまった。俺にそんなことをいう女は初めてだ。

ふと彼女の瞳を見つめ尋ねた。

「お前のその瞳の色…」

「む?ああ、変か?」

「いや、そうじゃない。綺麗だ。薄い紫色か?」

「ああ、藤色という色だ。其方こ薄く氷の張った水面のような色だな。綺麗だ。」

「っあ、ああ。アイスブルーだ。そんな風に言われたのは初めてだ。」

確かに日本人でこの色は珍しいのかもしれないが、まさかそんなことを言われるとは思わなかった。言われ慣れた綺麗という言葉なのに彼女の口から出たと言うだけで俺の顔は熱くなった。慌てて顔を逸らして口元を手で覆う。ちらりと彼女を見るとこちらを見て微笑んでいた。


そうこうするうちに入り口が見えてきた。入り口の横には彼女の両親らしき姿が見える。ここまでくれば大丈夫だろうが、はっきり言って俺は彼女ともっと一緒にいたい。そう思っていると彼女が口を開いた。

「ここまでくれば大丈夫だ。横に両親の姿も見える。世話になった。感謝する。」

「…なあ」

「うん?」

彼女と一緒にいたくて俺は声をかける。

「また逢えるか?」

「私がイギリスにいるのはあと3日だ。それ迄に再び会うのは難しいだろうな。」

「…。」

「しかし私はまた逢いたいと思った。願っていれば叶うことだろう。」

「そういうもんか?」

「ああ。そういうものだ。」

なるほど、願っていれば叶うというものか。少なくとも彼女もまた会いたいといってくれている。
彼女の瞳を見つめると今はそれでいいような気がした。

彼女が俺のことを忘れられないようにと俺は彼女の白い肌にキスをした。呆然とする彼女にニッと笑うと宮殿に向かって駆け出した。

「いつか俺様が直々に迎えに行ってやる!またな!」

姫を迎えにいくのは王子の役目だ。

宮殿に帰ってきた満足げな俺に両親は何かあったのかと尋ねた。俺がお姫様を助けていたのだというと2人は顔を見合わせて不思議そうにしていた。

屋敷に帰った俺はすぐにミカエルにペンダントを頼んだ。彼女の瞳のような藤色の宝石を見つめてしばらくの間笑っていた。

…あ、そういえば名前を聞いていない。


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