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藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編)
前世の記憶
※微グロ注意

私の記憶にある最も大切な思い出である。戦場は赤く染まり、粉塵のあがる穢らしい世界の中で私はその人に私は自分の出来る最高に美しい舞を踊り続けるのである。日ノ本を大きく揺るがす大戦の中、私は武人としての誇りだけは最期まで捨てるつもりは無いと、そう叫ぶようにただただ刀を振るい続けたのであった。どれほどの時間そうしていたかは分からないが私の動きを止めたのは戦の終わりと同じく聞こえてきたものであろう。

東軍の勝利だ

…ああ、なんということだろうか。終わってしまったのか、私たちは。どう処理して良いのかわからない感情が脳内を走った。しかし私はまだ絶望仕切ったわけではなかった。とにかく彼らと合流しなければ。その思いだけで私は戦場を去り、噂話に耳を立てながら京へと入ったのであった。

やっと京へ入った頃には私はもう生きる気力というものは殆どは残ってはいなかった。ここまでに得た情報は三つ。一つはあの戦は東軍が勝利し、我が西軍は敗れたということ。二つは、刑部も左近も戦で死んだということ。そして三つは三成は捕えられ、明日処刑されるということ。ここまで来てしまえば最早どうしようもない。私が今生きているのはたったひとつ、三成の最期を見届けるためだけである。

次の日、三成と六条川原で、というのが皮肉だが、私たちは最期の逢瀬をした。私は誰にも見つからない橋近くの咲いていない藤棚の隙間から、三成は川原から。二人瞳を最期まで、彼の首が落ちるその時まで、見つめ続けたのである。

そしてこの世への未練というものをすべて綺麗に吹き去った私は三成達とよく訪れた、所詮思い出の地である湖にて体をその翡翠に染めたのであった。



筑摩江や 芦間に灯す かがり火と ともに消えゆく 我が身なりけり





あきゅろす。
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