*1
「……」
「……」
冒頭から沈黙続き。
ただただ、気まずい。
それもこれも、俺のせいなのだが。
時間は夜、場所はベッド……とくればどんな状況かは察してもらえるだろうか。
そう、そういう仲の俺となまえは、そういう雰囲気の真っ只中だ。
と言っても、衣服が乱れている訳でも押し倒している訳でもない。
単に俺が意識しすぎているだけで、なまえにはそんな気はないのかも……そう思うと、どうにもヘタレてしまう。
「アスベル……?」
「!、なっなんだ?」
「ん……ごめんね、なんか」
「え?」
「魅力、ないよね」
ああもう、なまえは何もわかってない!
俺はこんなに高揚しているのに、まったく気付いてないなんて!
……なまえをこんな風に不安にさせてしまっている俺も、悪いのだけど。
そうだよ、いつまで縮こまってるんだ俺。
時には本能的に動いたっていいだろ、いやむしろその方が魅力的に違いない。
戦闘だってヒットアンドアウェイが基本なんだ、まさに今がヒットの時だろ……!
「好きだ!」
「え、え……?」
「なまえを見てるとどうしようもなくドキドキするし、どうしようもなくムラムラする!」
「あっ……ありが、とう?」
「ほら、心臓!」
「う、ん……?」
戸惑うなまえの手を強引に取り、俺の胸に押し当てる。
自分からした事なのに、心音はドクドクと激しさを増した。
ああなまえの手、細いのに柔らかいな。
手がこんなに柔らかいって事は、きっと……。
交代だ、今度は俺の番だなとか言ってなまえの心臓(あくまで心臓)に触れたら怒られるかな……さすがに怒られるよな。
「すごい……ドキドキ、してる」
「だろ?……だから、魅力ないとか言うなよ」
「う、うん」
「なまえ……」
欲求に負け、なまえの頬に手を伸ばした。
ふにふに、自分にはない感触を楽しむ。
もう一方の手ではなまえの綺麗な髪を幾度も梳いた。
驚くほどさらさらとしたそれを耳にかけ、額に、瞼に、頬に、唇を落とす。
次々に色付く柔肌が、愛おしい。
そして最後に、小さな唇にうっとりと口付けしようと──
「あ、アスベル」
「ん……?悪い、嫌だったか?」
「違うの。あの、あのね……わたしも、すき」
「!」
ぷつり、と何かが弾けた。
糸の切れる、音
(なまえー!)
(ひゃっ、ちょっと、アスベル!?)
(なまえ!好きだ!)
[Back]
無料HPエムペ!