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*1



背の高いあなた。




「ねえ、」




背の低いわたし。




「マリクさんは」




違う高さ。
それでも絡む視線は、互いの気遣いのしるし。

ほんの少し、爪先に力を込める。
あなたにはまだ届かない。
ほんの少し、背筋をぐっと伸ばす。
あなたにはまだまだ届かない。

大きなあなた。
小さなわたし。
触れたいの、ねえ、ねえ、



「わたしじゃダメ、ですか?」


「は…?なんだ、いきなり」


「……わかってるくせに」




子どもっぽい言葉。
大人ぶったすまし顔。

二つをかき混ぜるように、わたしの頭を撫で回す。
ごつごつした男らしい手は温かいような冷たいような、確かなのはわたしの体温はそれによって上昇させられているという事。

心地好くって、なんだか何もかも忘れちゃいそうな感覚に陥る。
そんなわたしを現実に引き戻すのは、いつもあなたの忍び笑い。




「も、もう!子ども扱いしないでください!」


「まだオレの半分も生きてないんだ、十分子どもだろう」


「それは、でも、中身は違うかもしれないでしょう?」




あなたの言葉はいつも正しくて、すぐ勢いを削がれちゃう。

気づいて、ねえ、ねえ。
今すぐあなたに触れたいの。
あなたのものになりたいの。




「なら、試してみるか?」


「試す…?」


「オレを落としてみろ、という事だ」


「え…!?いいんですか?」


「ほう、随分と自信があるようだな」


「だって、だって!」




嬉しくて。
と、思わず出かけた言葉をぐっと押しとどめる。
恋は駆け引き、子どもなわたしはいらないの。


ほんの少し、爪先に力を込めて。
ほんの少し、精一杯背筋を伸ばす。
いつもと違うのは、あなたへと伸びる両の腕。

ああ…なんだか今は、空が近いような気がする。




背伸びしたって足りないくらい


(大人なあなたに)
(噛みつくような口付けを)
(もちろん、あなたは余裕の笑みで)





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