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お前に溺れた俺の蜜
フォービドゥン
細く開いた隙間から差し込む眩しい光と冷たい風で、俺は目が覚めた。
窓が少し開いていて、カーテンも雑に少しだけなびいている。
見慣れた天井が、俺の網膜に少しずつ取り込まれる。


夢…だったのか…


あんなに幼い頃の夢を見たのは久しぶりだった。
起き上がろうと、体を起こす間もなく俺ははっとする。


ベッドの横にルシィがいるのだ。
「お兄ちゃん、目、覚めた?」
ルシィは俺の瞳を真剣に見つめる。俺は息さえうまく出来ずに戸惑った。
俺のこの想いはいつも変わらずにいるのに。
君を想い続けているんだ…


何故ここにルシィがいるのかと疑問に思う暇もなく、ルシィは俺をベッドに押し付ける。
「今日は寝てなくちゃだめ。明日は大切な日なんだから」
訳も解からず横になる俺。そして、目覚めた思考回路を使って思い出す。


「明日…お前の川流しの日か…」


重暗い表情になったルシィを見て、俺は言わなきゃ良かったと後悔した。
川流しとは、俺らの村に古くから伝わる儀式のことだ。
成人間際の女性、しかも処女だけをあの川に流す。
神への宝物品として。
ルシィの兄である俺は、今日は外へ出られない。
身内の者は、川流しの前日は外出を許されず、食も禁じられている。


川流しを受けた女性は村へ帰ることは出来ない。
海まで流れて、海へ還る。
全てが生み出された場所へと還る。


それは死を意味するのだ。


おかしな話だ。
何故君が、神に捧げられなければならないんだ。
そんなに従順な俺らじゃない。


この村は、とにかく神を尊ぶ。
村のしきたりや掟なんかも、神への忠誠心からのものが多いのだ。
俺がしてるシルバーのピアスも、生まれてすぐに付けられた。
神への忠誠心の証である。


村の掟を破ってはならない。
破ったら最後、神への冒涜、謀反という烙印を押される。
偉大なる天使ルシファーがそうであったように、地獄まで墮とされる。
だから俺の想いは、押し殺さなきゃならない。
君を堕とすわけにはいかないから…


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あきゅろす。
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