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お前に溺れた俺の蜜
”ZERO”ウィルス
残像の透明度が急激に増す。
こうしていられるのも残りわずかだ。


「ゼロ…消えちゃ嫌だよぉ…っ」


縋り付く君を強引に押し戻し、パソコンの前に置かれた椅子に座らせる。
僕は君を抱き締めてあげる事しか出来ない。
そして君を守る為に君に別れを告げなければならない…。


「消去コードを入力して欲しいんだ」


君の背後から肩に頭をもたれて、君を抱き締めて言う。
もう時間がない。
アンはずっと泣きじゃくって居たが、とうとう意を決したようだった。


「コードは何なの?」


「アンの僕への気持ち…」


ジジッ。
残像が薄れてゆく。
消えかかった手に思いの程を託すかのように…


「ゼロっ…!!」
「僕が消える前に早く!」


急かされるように動かす指先に
少女は冷たい何かを一文字ずつ打っていく。
閉ざされた現実を一つずつ飲み込んでいくようだった。


ジジッ。ジジッ。
さらに残像は刻々と薄れていく。
最期の言葉を少女に放つ。


「エンターキーを押して…そし…メール……るんだ……」


「ゼロぉ…っ」


一瞬戸惑いはしたものの、
真剣な少年の眼差しに少女は涙を流した。
そしてエンターキーを静かに押す…。


何事も無かったように、少年の姿は消え去っていた。








少女は椅子に座り込んだまま、ぴくりとも動かない。
その瞳からは涙が溢れ出ていた。
止まらない生暖かな液体を太股に落としても構わず
只々呆然と響く泣き声だけが木霊していた。


ピンポン。


メール受信の音が、そこへ鳴り響いた。
おずおずと顔を上げ、その目に飛び込んだ送信者の名前に驚愕する。


「送信者:ZERO」


…どうして?
どうしてメールなんか…


慌てたようにメールを開く。
そこには明らかに今し方まで一緒に居た少年からのメッセージに相違なかった。



*********
愛しいアンへ


僕は初めて君を見た時から
君の事が好きだった。
こんな形になってしまって本当にごめん。


コンピュータウィルスである僕が
この世界に居る事はとても危険で
悪用する為に生まれた僕は
ずっと自分を呪っていた。

僕がここに居れば君も危険になる。
この世界全部、危険になる。
僕は君を守りたかったんだ、だから…


消去コードは幾つか用意していたんだ。
君の気持ちを聞けて嬉しかったよ。
ありがとう、アン。


消去コード:I LOVE YOU
**********



ねえ、ゼロ。
あなたは食わせ者ね。
何故こんなコードにしたの?
私の気持ちを知っていたの?
ねぇ、ゼロ、答えてよ…



まだあなたがこのモニター越しのどこかに居るのなら
私の溢れ出る涙を見ているかしら…?
これはパソコンの光が眩しいからよ。
別にゼロ、あなたとお別れしたからなんかじゃないわ。


ねえお願い。
最期の私の言葉を聞いて…


ありがとう…




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