お前に溺れた俺の蜜 フォービドゥン 「いたぞ!!」 大声が響き渡ったかと思うと、土手の上に村の連中たちが群れを成して睨んでいる。 見つかったんだ。 傍にいたルシィを強く抱き寄せる。 ルシィは渡さない。誰にも。例え神でも…。 「ルシィ。何をしてるんだ。明日が大事な日だということを忘れたのか!!」 聖職の村人達が皆同じように叫んでいた。 ルシィは困惑した表情で、しかし強く、奴らに言ってのけた。 「あたしは…神に捧げる器じゃないっ!あたしは…」 あたしの心は、ずっと昔から禁戒を破ってる。 あたしはお兄ちゃんを愛してる。 風が一瞬止んだかのように、唖然とした空気が流れる。 村人達は呆気にとられたかのように立ち尽くしたままだ。 逃げるなら今しかない。 ルシィの腕を掴んで、俺は一緒に走り出す。 抑え付けていた想いが、一気に開放されるんだ。 村を出れば掟も関係ない。 縛られることもないんだ。 誰も許してくれなくてもいい。 許しを乞わなくてもいい。 ただそこに君が居れば。 ただ君を愛してるだけ。 ただ君を抱きしめたいだけ。 ただ君を… 気が付くと、醜い雛鳥は水面に漂っていた。 ルシィの身代わりになったかのように。 儚く。 [*前へ] [戻る] |