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お前に溺れた俺の蜜
PELSONA
太陽が空と陸を丁度半分に分かつ時、その儀式は始まった。

言えなかった言葉。
君への思い。
全部、君へ、伝えるよ。

あの秋桜の道で、照れくさくて言えなかった言葉。僕の内に有るんだ。
本当は、ずっと、言いたくて、言えなかった。
君が、死ぬ時にしか言えないのが、とても歯痒い。
何度も何度もナイフで血を流し、その歯痒さを押し殺した。
狂ったように見えるだろう。馬鹿な事のように思えるだろう。
戦争なんて、誰かの為の、自己満足の道具でしかないんだ・・・・・・。

君が、祭壇の中央に、十字架に架せられ、立って居る。

僕は、そこを、ゆっくり、一歩一歩、踏み締めるように、登っていく。
両手には、ペルソナをしっかりと握り締めて。

涙が出ない。
涙が出ない。
どうしようもない、行く宛のない思いが、僕の内を交差する。

僕が持っている、この仮面を捧げた後、君は死ぬ。
もう、僕は、ここには居なくなるんだ。

祭壇の最上部に達した時、君は満面の笑みを浮かべて、死ぬのは怖くない、と言っているふうだった。
怖いのは、僕だけじゃない。
満面の笑みを浮かべている君だって、本当は死は怖いんだ。

僕は、君の前に立ち、一度後方を振り向いて、ペルソナを高く掲げた。
そして、高く掲げたペルソナを、遠くの空まで届くように高く投げた。

仲間の軍兵は、ざわめいて、謀反たるこの僕に罵声をはいていた。

でも、僕には、そんな声は届かなかった。

青い、青い、空を仰いで、僕は、両腕を一杯に広げた。
そして、ずっと言えなかった言葉を言った。

「また、めぐり逢えるよ」

次の瞬間、大きな無数の銃声とともに、赤い血が吹き出した。
そこには、沢山の赫トンボが弔うように飛び交って居た。



空を飛べたら、生きたまま、戦争のない所へ行けるのに・・・・・・

秋桜は未だ咲いているかな・・・・・・

トンボが飛んで居た、何のトンボだっけ・・・・・・

最後に言った言葉はおぼえてる・・・・・・

あの時交わした約束もおぼえてる・・・・・・

「同じ空の下、まためぐり逢おう」

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あきゅろす。
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