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Dear heart
体温までの距離 1





日比野仁は高校の同級生だった。

同じくバレー部に所属して、彼らが3年生の時の春の地区大会ではベスト4まで進出した。
元々強いチームではなかった彼らが、自分たちの努力でそこまで勝ち進む事が出来た喜びは、例え優勝を逃したとしてもかけがえのない財産としてチームの中に残っている。

彼らが卒業して6年。
母校のバレー部はさらに強くなって、優勝候補の常連にまで成長していた。

思い出すと結構切ない。

なぜもっと努力しなかったのだろう。
なぜもっと強く願わなかったのだろう。
そうすれば、全国大会も叶ったかもしれないのに。
日比野ほどのプレイヤーを抱えながら、彼を全国に連れていけなかった自分の過去が、今でも悔やまれてならない。

そんな事を思い出して、緒方は腕に記された番号を見つめながら、携帯を手に取った。

恵まれた体格と身体能力。
チームをまとめあげる力。
どれをとっても非の打ち所の無い彼は、ゲーム中には185cmの長身から強烈なスパイクを叩き込む、果敢に攻めるエースアタッカーとしてチームの戦力の要になっていた。

そして、緒方自身も力のあるプレイヤーであり、日比野と肩を並べて勝ち進み、共に勝利を分かち合ったあの日々は、一番輝いて充実した時間だったに違いない。

社交的でよく気のつく、学生の中にあっては一際大人びて見える彼は、男女を問わず誰からも好かれる存在で。
緒方はそんな日比野が大好きだった。

入学してすぐに同じクラスで同じ部に所属していた事もあり、ふたりは誰よりも親密に付き合っていた。

緒方にとってはそれが誇らしくて、嬉しかった。





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