Dear heart
めぐりあい5
事務室に戻る途中に救急玄関がある。
ふと、自動ドアが開く音に誘われて視線を移すと、緊急呼び出しを受けてやって来た、青年医師たちが院内に入ってくるのが見えた。
それは、小児科医篠田と産婦人科医曽我のふたりだった。
ふたりの顔ぶれで、緒方は何があったのかを察する。
「お疲れさまです。緊急オペですか?」
緒方はふたりに声をかけて迎えた。
「ああ……飛び込みでね。ふたを開けたら早産の双胎、おまけに妊娠高血圧症ときている」
夜間の緊急呼び出しだというのに、この曽我という医師は、普段と変わらずに返してくる。
相変わらずの二枚目ぶりだと、緒方は感心した。
比べて、篠田の方はいかにも寝起きといったボサボサの髪とどんよりとした表情で、何だか同情を禁じ得ない。
「あ〜あ……。ぼくはきっと朝までNICUに缶詰めですよ。こんな時に先生と一緒に着替えたって、ドキドキしないよな……」
「ばかな事言ってないで、早く行きますよ。もう藤本先生が入室してるんですから」
嫌々やって来た篠田を、曽我が連行しているように見える。
日中フルタイムで診療に携わり、夜間の緊急呼び出しにも対応する。
夜間の呼び出しがあっても、翌朝からの診療が免除される訳でもなく、延々と診療や手術に臨まなければならない。
篠田の心情は緒方にもよく理解できる。
本当に大変だと思う。
緒方はふたりを見送ってから、ふたたび事務室に向かって歩き出した。
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