Dear heart
めぐりあい3
緒方斎は、この医療法人である総合病院の医療事務課に勤務している。
彼は、市内の福祉系大学を卒業してすぐにここの医療事務員として就職した。
安定した収入と保障が魅力で就職したものの、安定した収入を得るには、やはりそれなりの仕事の質と量が要求される。
力量が問われるのは、何も技術職や医療スタッフだけではない。
膨大な件数の医療点数の算定と、レセプトの打ち出し作業に叩き上げられる毎日で、受付カウンターでの患者対応と電話対応に追われる外来業務は緊張の連続で、勤務が終了する頃にはすっかり疲れはててしまう。
最近、女性職員が医事課に大勢配属されてきた事もあり、必然的に当直要員が減って、当直回数が月に7〜8回というシフトは珍しくない。
それでもまだ暖かい季節はいい。
この北国の街札幌に、もうすぐ長い冬がやってくる。
冬という季節には、突如として悪魔の所業としか思えないドカ雪が降る。
疲れきった身体にムチ打って、日が暮れた退勤時の寒さと闘いながら、孤独に行う車の雪下ろし作業は、切なさが身にしみる。
帰って寝るだけの部屋と、病院との往復に明け暮れるだけの潤いの無い日々は、はたしてこのままでいいのかと、何度も自問自答を繰り返した。
それでも、毎日がいっぱいいっぱいで、別な居場所を探すような余裕などなかった。
そんな毎日を過ごしながら、もう2年が経とうとしている。
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