短編
Una sposa di giugno
ケーキにマフラー、ピアスに鞄、靴に腕時計……それからキスと初めてと。
色々考えられる限り、そして要求された事全て、私が出来る限りのモノを今まであげてきた
ところが、だ。流石に長年毎年誕生日にクリスマスにとプレゼントを渡していると…そろそろネタ切れになってきた

「今年…どうしよう」

出会ってから10年目だし、何か特別な物をあげたいのだがもう思い付かない
ありきたりの物は渡し尽くしてしまったし、何より今年は「ありきたりの物」は嫌だ


「うーん、俺もアイツが何が好きで何が欲しいかなんて知らないし、クロームが知らなくて俺が知ってる物なんてないよね…」

「ボスも分かんないか…」

「ごめん、正直俺もネタ切れ…まぁでもクロームからなら何でも喜ぶ気がするけど…」

「でも……」

「思い付かないならいっそ骸に直接聞いてみたら?」

「えー……」

出来れば使いたくない手段。でも正直今までもやむを得ず時々使ってしまってた手段だから今更どうこうという事もないかもしれない
「…そうね、本人に聞いた方が早いものね……」

「ごめんね力になれなくて…」

「ううん大丈夫。……ボスもたまには直接京子に訊いてみるのもアリだと思うよ」

「お、俺の事は良いよ…!それに多分"何でも良い"って言うと思うし……」

「ふふ、分かんないよ?」

「ど、どういう意味だよもー……」

こないだ京子が一つだけ欲しい物があると語っていた事を思い出しながらボスに意味深な笑みを浮かべた

早く聞かなければ準備がいるものだったら大変だ、と骸様を探していたら割とすぐに自室のテラスで涼んでいるところを見つけた

「骸様!」

「……おやクローム、その顔…そろそろ訊きに来る頃だと思ってましたよ」

「えっ、な、何を……?」

「僕に欲しい物とか訊きに来たのではないですか?最近は毎年の事じゃないですか」

自分が何しに来たかあっさり看破され、いかに自分が毎年最終的に骸様に頼ってるか分かってしまい、何だか悔しくなってボソボソと「だって、」と呟いた

「……お、思い付かないんだもの」

「クフフ、良いんですよ別に。今考えてたとこなんです、結構楽しいですよ?」

「なっ何か欲しい物決まった?」

期待を込めて言うと「あぁそれで思ったんですがね、」と前置きしたかと思うと
「花嫁さんが欲しいな…と思いまして」と予想だにしなかった回答をした

「……え。」

にこーと笑う骸様に対し私は困ってひきつった笑顔になった
花嫁?花嫁ってお嫁さん?どういう事?…というか骸様は…と考えれば考える程悲しくなってきて、

「…ごめん、なさい……私には用意出来ない…」

何かが瞳に溜まってくるのを感じ、そんなにショックだったのかと自分に呆れていたら骸様はきょとんとした顔をして

「…おや?何か勘違いしてる様ですね、いや、勘違いじゃないとしたら僕がショックなのですが」

「?」

「ふむ、ではもう少し分かりやすく言いますね」

今度は私がきょとんとしていると「こないだ見つけたのですがね」なんて言いながら自室に戻りタンスの奥をゴソゴソ探りだした

「……ほら、こんなところにクロームサイズのドレスと、指輪が」

と、どう見ても新品の箱達を取りだし私の前に翳した後

「更に都合の良いことに僕の誕生日は6月です」

知ってるけどそれが?という顔をしていたら、全くもう!とちょっと憤慨したように「ジューンブライドくらい女の子ならば知ってるでしょう!」怒られてしまった

頭が混乱して、言葉の真意をもう一度確かめるべきかどうかあたふたしていたら

「……用意出来ないのなら自分がなればいいのです」

と、額に柔らかい物が触れ、薬指に何かが通った時、事の次第が全て把握出来た




「……初めからもっとハッキリ言ってくれれば良いのに」

「ならばもう一度言いましょうか?」

「いや、やっぱ良い」

「遠慮なさらずとも。Vi prego di sposarsi」

「...contento」



(ところで何故私のサイズを?)
(イタリア男子たるもの恋人の衣服と指輪のサイズを知らないでどうするんですか?)

――――

ギリギリ間に合った…
どんな話にするか迷った挙げ句クロームをプレゼントしましたよっと←


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