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――痛い……

俺がまず最初に感じた、激動。

喧嘩ではめったに負けないこの俺が…

「…負けた……だと? …ッ」

「さぁ、さっさと吐いてもらうよ? 竜堂千宏は…どこ?」

あのブス女…。

誰だよ、コイツ…。

口の中に鉄の味が広がる。

久しぶりに自分の血の味を自覚した。

「…早く」

「言って…どうすんだよ?」

「お前には関係…ない。僕が会いたいから…聞いてるんだろ?」

その間は何だ?

夜だから暗くて顔はよく見えない。

ただ、金髪なのはわかる。

こんな時間に、散歩なんてするもんじゃないな…。



――一方、桂木邸

千宏は自室で自身のCrと向き合っていた。

Crは光を帯びて輝いている。

「ついに来たんだ…」

――アイツが…。

千宏は自室を飛び出し、靴を履いて外へと駆けて行った。

本当にそいつなのかはわからない。

だけど…このまま放っておいたら危険だ!

「Cr24、発動!!」

より一層輝きを増しながら、Cr24は形状変化し、スケートボードへとなる。

「アンダーレ(行け)!!」

千宏はそれに乗り、さらにスピードを上げた。

金髪の男は俺へと近づいてくる。

地面に突っ伏している俺は、懐から銃を1丁だけ出し、反撃した。

だが、ヤツも並みのヤツではないらしく、かわして近づいてくる。

一体、俺が何をしたって言うんだ?

第一、俺はクソ千宏とは仲が悪いハズだ…。

多分。

「10秒…そんだけ待ってあげる…」

ヤツはしゃがみこんで俺の顔を見下した。

「ウーノ(1)…ドゥーエ(2)…」

――何言ってんだ?コイツ。

俺には理解できない言葉。

まさか…!!

「…オット(8)…ノーヴェ(9)…ディ「ニーヤァァァァ!!!!」

ヤツが言葉を言い終える前に…

ヤツが求めてた人物が来た。

「遅ェよ、クソ千宏…」

「助けてやったんだからさ、感謝の言葉くらい言えば?ほら、グラッツィエ」

「俺は日本人だ…」

クソ女がヤツと向きなおした後、奴等は日本人の俺には理解できない言葉で会話していた。

よくわかんないけど、2人に対してムカつく。

自分でも何に対して嫉妬してるんだか…

「眞人」ふと、名前を呼ばれる。

その頃には俺も順調に回復しつつあり、起き上がっていた。

「僕は…ルニーヤ・スペッキオ……13歳」

クソ女のCrなんとかが光ってたから、ヤツの顔がはっきりと見えた。

全体的に線が細い。

ひょろひょろ。

目付きはやる気がなさそうな感じ。

俺とは絶対気が合わない。

「谷眞人。13歳」

それだけは言わせて貰って、とっとと家へと帰る。

というよりは、帰らせてもらいたい。

変人達といると、俺まで犯されてしまいそうな気がする。

次の日、学校へ行こうと仕度をして門でお嬢を待ってたら、ヤツがいた。

朝から見たくない顔を見た…

そんな失望感が俺に湧いてくる。

「お…おはよぅ…」

ヤツは俺に話しかけてきた。

声が小さくて聞き取れない。

「何?」

俺は無表情でヤツを見た。

数秒後、俺が目を見開いて何度もヤツの格好を確認したことは、言うまでもない。

何故か?

それはだな…

「今日から…転校してきた…」

俺と同じ格好。

「ルニーヤ・スペッキオ…13歳…」

ヤツは俺を見てにこっと笑った。

「ニーヤって…呼んで……眞人」

「いちいち『13歳』付けなくてもいいと思う、俺は」

こういうタイプは、苦手だ。

美鶴ならまだいい。

まだ慣れている感がある。

そのうち、慣れるんだろうけどな…。

グッバイ、俺の日常。

今、2人のイタリアからの転校生にすべてを踏みにじられた気がする。

「僕は…ヒーラを待ってる…眞人は…誰を……?」

ヒーラ?

クソ千宏のことなのか?

まあいい。

「お嬢」

俺は短く答える。

そのあと、ニーヤは何も話しかけてこなくなった。

ただボケーっと空を眺めている。

俺は…

――こんなヤツに負けたのか?

ムカつく…それは嫉妬だ。

…悔しい……あえて言うならば、俺の懺悔。



そのとき、初めて思った。

俺は…

俺は…ニーヤを超えたい。

強く、なりたい。

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あきゅろす。
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