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俺は力が欲しかった。

お前が欲しいわけじゃない。





千宏は完全復活を遂げていた。

もちろん、ニーヤも。

回復力が高い。

そして俺は――…



「でも、力が欲しいんでしょ? それを得るためには私と――」

「知ってる」

「できるの?」

俺はため息をつく。

そんなの、やってみなくちゃわからない。

でも、できる自信もない。

俺はまだ13。

「法律違反にならねェか?」

「なったとしても、バレなきゃ問題ないよ」

クソ女が笑う。

ちくしょー!

「何人の人とヤったと思ってんの?」

こいつ、何を聞いて来るんだ?

そんなの…。

「ま、実際、両手足の指を全部使っても数え切れないんだけどさ」

――は?

それには俺も驚いた。

こんな歳なのに…。

「歳は関係ないから」

咄嗟に付け足された。

じゃあ、何なんだ?

千宏は机に落書きをしだす。

――そうか、ここは学校だったのか。

でも周りには人がいない。

空は少しオレンジ色。

放課後、か?

ぼけーっとしながらも、彼女は落書きを続ける。

「私を満足させることが出来る?」

千宏はそう言った。

だからなぁ!!

そんなの――。

「何か勘違いしてるみたいだから言っとくけど、別にキスでも平気だから。身体の内部でだから、私の口の中で私の舌と接触。ね?」

要するにそれは…。

俺にディープをしろと?

んまぁ…だったらまだそっちの方が…。

「でも私は、本当に愛した人としかキスはしないけど」

俺は千宏を見つめる。

だけど千宏は、俺のことが眼中にないらしく、完成した落書きに夢中になって見惚れていた。

何なんだコイツは…。

「アンタに任せるから」

「任せるって…」

「要は私が谷眞人に惚れるか、それともアンタが私とヤるのが早いかってこと」

最後に彼女が俺に微笑んだ。

やっとこっちを見てくれた。

何だかな…。

「私じゃなくて、ニーヤでもいいけど? 男同士でさ…」

「いや、それはそれで痛いだろ?」



…最近、俺、変わった。

俺は久しぶりに弾を撃った。

この町で桂木は警察と同等の力を持つ。

もちろん、それなりの奴等の集まりだからだ。

だから警察署にある訓練場を使わせてもらえた。

ま、使う奴っていったら、俺しかいねェけど。


パン!!


標的である人型の的の脳天に上手く当たる。


パンパンパンパンパン!!


連続だからとはいえ、はずさない。

美鶴が盾なら、俺は矛とならなきゃなんねェ。

だからッ!!


パン!!


俺は強くなりたい。

この二丁拳銃も強化させて。

俺だけの力を…。

「僕が手伝ってあげよっか?」

刹那、バン!!という音と共に、標的が爆発した。

何だ!?

「僕は夢幻(ムゲン)♪」

そいつは魔女みたいな大きな帽子をかぶって、にこって笑った。

どこか幼い。

「黒薔薇の夢幻だよ♪」

夢幻が手で銃をつくり、自分の口で「バン!」というと、標的が倒れた。

「不思議だよね〜♪ この力、ほしい?♪」

彼は笑っていた。

この際、彼だよな?

「僕は君が欲しいな♪」

俺よりも小さく、すばしっこい。

形容詞で表すなら、可愛い。

すごくな。

千宏より可愛いんじゃね?

「お兄ちゃん、名前は?」

「谷…眞人だけど?」

「眞人兄ちゃん♪」

あ、ヤバイな。

なんかクラっとする。

貧血か?

そんなことはねェはずだ。

ちゃんと飯食ってるぜ?

威圧感、そういうのなのか?

でもこいつは子供…。

あ、ダメだ…。

倒れ――。



もふ、とやわらかい何かにぶつかった。



「んぁ?」

頭にそのやわらかい何かが当たってる。

そんなもの、此処にはないはず。

じゃあ何だ?

「正解はぁ〜♪ じゃじゃーん!」

頭上からロリ声がした。

「僕の大きな胸でしたぁ♪」

いつのまにか、彼は彼女になっており、成長していた。

しかも胸でか…。

鼻血出そうだ。

「男? 女?」

眞人が夢幻から目を逸らして言った。

「僕は見ての通り、女だけど〜♪」

眞人は夢幻を置いて、駆け出した。

もちろん、自分の家へと向かって。

鼻を押さえている。

ヤバイ…。

女って、あんなにやわらかいんだ…!!





「可愛い子だね♪ 欲しくなっちゃった♪」

大きな帽子で顔を隠しながら、夢幻が言った。

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