Chrome.7
そん、な…。





ここ数日、千宏とルニーヤが消えた。

学校にも来ないし。

僕が知る範囲ではだけど。

でも茜も知らないし、眞人も知らないみたい…。

眞人が「いつになったら…」って言ってたね。

何のことだろ。

僕は戦うことはあまり得意じゃない。

でも、それ以外のことなら茜をサポートできる。

例えば…

他の一家との交渉とか。

あとは、もしもの時の参謀。

僕はそういう担当に当てられる。

眞人と僕は正反対。

ルニーヤと千宏もだけどね。

うーん。

本当にどこ行ったんだろ…

ズー!!と、僕の部屋の襖が開く。

かなり速かったよ、今の。

「美鶴!!」

あ、眞人。

「玄関でクソ女とニーヤが!!」

ついて来いとでも言うように眞人は廊下へ出る。

僕も続けて出た。

廊下を走ってる…

あとで茜に怒られるんじゃ…

はァ…

行ってみたら、血だらけの2人が担架で運ばれている最中だった。

何で血だらけに?

「まだ意識がないのです、2人とも」

「一応、知らせた方がいいって、おやっさんに言われたんだよ」

眞人の言う"おやっさん"とは、茜のお父さん、つまり桂木一家の現頭首。

ってことは、この件、詳しいことは頭に聞いた方がいいかも。

「今日は寝ましょう。明日、詳しいことを2人に聞くです」



何で2人がこんな目に遭わなきゃいけないのかな?

それは千宏の言ってた"ヴァルセーレ"と関係があるのか…。

それも疑問の1つ。

とりあえず、早く寝よう。

色々調べるのはまた明日…。

――…



















寝れない。

確かに、こんなことがあったら当たり前かもしれないけど。

眞人のところにでも行ってみよっと。

「寝れるわけがないよな、そうだよな」

眞人も言う。

眞人の部屋は僕よりも質素。

それは僕の部屋には本がたくさんあるからで、眞人の部屋には勉強道具とか、そういう類のものは必要最低限しかない。

僕も見習わなくちゃね…。

でも、勉強はしないとダメ!

眞人の顔を見た。

眞人は開けた襖から空を見てるみたい。

星、すごく綺麗。

「星、綺麗だね」

「んあ゛ッ!? んん、ん…そうだな」

――違うこと考えてた?

「千宏のこと、心配?」

「んなわけないない!!」

…アレ?

反応が早い。

もしかしたら…。

本当は千宏のこと考えてたんじゃ…。

「何なんだよその疑うような顔は!」

「だってそうでしょ? ね?」

「んむ゛〜!!」

眞人はそれ以上反論してこなかった。

ってことは、肯定かな?

「あいつ等が怪我するなんてさ、俺達じゃ敵わない。世界は広いなって、思った」

「うん」

確かに。

「俺はもっと強くならなきゃならない。美鶴のためにも、お嬢のためにも」

「そうだね」

だから眞人は強くなってる。

知ってるよ。

眞人は僕と茜の分まで戦ってくれる、強くなれる。

だから僕も頑張らないとって思うんだ。







私の中のアイツが言う。

鬱陶しい。



『本物の愛がお前の中で生まれたとき、お前は強くなれるだろう』


「知らない」


『愛のない行為など、必要ないのだ』


「そんなの、興味ないね。私に関わる人は快感と力だけが欲しくって、近づいて来る。100年以上前からね」


『24、私たちをそんなに甘く見ないほうがいい』


「みてないし」


『すべては子孫繁栄のため。千宏、早く跡取りを決めろ』


「いらない。お腹痛いのいやだし」


『お前も快感にだけ溺れるのだな。母親と一緒だ』


「殺したのはあんたでしょ?」


『そうだな』


「だから私はあんたを殺す! ボスだって助けて見せる!!」


『お前に出来ればな。俺を殺す前に決めておけ』









「――つーこと。わかった? 私とニーヤはイタリアのヴァルセーレに殴りこみに行ったわけ」

「千宏!!」

茜が千宏に抱きつく。

見てるこっちが恥ずかしい…。

「生きててよかったです」

「…そうだね。ニーヤは?」

「まだ意識がない」

眞人が落ち着いた物腰で静かに言った。

「はいはい。着替えるから出てってよ」

千宏はいつもと変わらなかった。

よかった。

ほっと、胸を撫で下ろすっていうのは、こういうことを言うのかもしれない。

出て行く際にチラリと千宏を見る。

――着替える気あるのかな?

千宏は布団に潜っていた。

珍しく眞人が静かだった。

「何でテメェが…!!」

眞人がずっと静かでいるわけなんて無理で、千宏が復活したことにより、一層元気になっていった。

「学校もクラスも一緒なんだからしょうがないじゃん」

ニーヤは家で眠ってるからいないけど、またいつもの日常が戻ってきた。

「早く席替えしないかな? コレの隣、ヤダ」

千宏が眞人を指していう。

「上等だ。こっちだって嫌だね」

顔を近づけて睨み合っている。

あ! いいこと思いついた。

「茜!」

「美鶴? 何ですか?」

「いいこと思いつきました」

僕は茜に耳打ちをする。

うん、すっごくいいことだね。

たまに眞人に言われる。

お前、天然なんだか腹黒なんだかわかんねェって。

どっちかっていうと、腹黒かな?って、今思ってみた。

茜が千宏の頭の後ろに手を添えた。

僕も眞人の頭の後ろに手を翳す。

そして、同時に前へと押し出した。

「痛!」

「ぅお!?」

2人の鼻と鼻とがぶつかる。

結構痛かったりするんだよね、これ。

茜がクスクス笑ってる。

うん、こういう毎日って、楽しい。

ニーヤがいないのが残念だけど、ね。

[*前へ][次へ#]

10/24ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!