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そん、な…。
ここ数日、千宏とルニーヤが消えた。
学校にも来ないし。
僕が知る範囲ではだけど。
でも茜も知らないし、眞人も知らないみたい…。
眞人が「いつになったら…」って言ってたね。
何のことだろ。
僕は戦うことはあまり得意じゃない。
でも、それ以外のことなら茜をサポートできる。
例えば…
他の一家との交渉とか。
あとは、もしもの時の参謀。
僕はそういう担当に当てられる。
眞人と僕は正反対。
ルニーヤと千宏もだけどね。
うーん。
本当にどこ行ったんだろ…
ズー!!と、僕の部屋の襖が開く。
かなり速かったよ、今の。
「美鶴!!」
あ、眞人。
「玄関でクソ女とニーヤが!!」
ついて来いとでも言うように眞人は廊下へ出る。
僕も続けて出た。
廊下を走ってる…
あとで茜に怒られるんじゃ…
はァ…
行ってみたら、血だらけの2人が担架で運ばれている最中だった。
何で血だらけに?
「まだ意識がないのです、2人とも」
「一応、知らせた方がいいって、おやっさんに言われたんだよ」
眞人の言う"おやっさん"とは、茜のお父さん、つまり桂木一家の現頭首。
ってことは、この件、詳しいことは頭に聞いた方がいいかも。
「今日は寝ましょう。明日、詳しいことを2人に聞くです」
何で2人がこんな目に遭わなきゃいけないのかな?
それは千宏の言ってた"ヴァルセーレ"と関係があるのか…。
それも疑問の1つ。
とりあえず、早く寝よう。
色々調べるのはまた明日…。
――…
寝れない。
確かに、こんなことがあったら当たり前かもしれないけど。
眞人のところにでも行ってみよっと。
「寝れるわけがないよな、そうだよな」
眞人も言う。
眞人の部屋は僕よりも質素。
それは僕の部屋には本がたくさんあるからで、眞人の部屋には勉強道具とか、そういう類のものは必要最低限しかない。
僕も見習わなくちゃね…。
でも、勉強はしないとダメ!
眞人の顔を見た。
眞人は開けた襖から空を見てるみたい。
星、すごく綺麗。
「星、綺麗だね」
「んあ゛ッ!? んん、ん…そうだな」
――違うこと考えてた?
「千宏のこと、心配?」
「んなわけないない!!」
…アレ?
反応が早い。
もしかしたら…。
本当は千宏のこと考えてたんじゃ…。
「何なんだよその疑うような顔は!」
「だってそうでしょ? ね?」
「んむ゛〜!!」
眞人はそれ以上反論してこなかった。
ってことは、肯定かな?
「あいつ等が怪我するなんてさ、俺達じゃ敵わない。世界は広いなって、思った」
「うん」
確かに。
「俺はもっと強くならなきゃならない。美鶴のためにも、お嬢のためにも」
「そうだね」
だから眞人は強くなってる。
知ってるよ。
眞人は僕と茜の分まで戦ってくれる、強くなれる。
だから僕も頑張らないとって思うんだ。
◆
私の中のアイツが言う。
鬱陶しい。
『本物の愛がお前の中で生まれたとき、お前は強くなれるだろう』
「知らない」
『愛のない行為など、必要ないのだ』
「そんなの、興味ないね。私に関わる人は快感と力だけが欲しくって、近づいて来る。100年以上前からね」
『24、私たちをそんなに甘く見ないほうがいい』
「みてないし」
『すべては子孫繁栄のため。千宏、早く跡取りを決めろ』
「いらない。お腹痛いのいやだし」
『お前も快感にだけ溺れるのだな。母親と一緒だ』
「殺したのはあんたでしょ?」
『そうだな』
「だから私はあんたを殺す! ボスだって助けて見せる!!」
『お前に出来ればな。俺を殺す前に決めておけ』
「――つーこと。わかった? 私とニーヤはイタリアのヴァルセーレに殴りこみに行ったわけ」
「千宏!!」
茜が千宏に抱きつく。
見てるこっちが恥ずかしい…。
「生きててよかったです」
「…そうだね。ニーヤは?」
「まだ意識がない」
眞人が落ち着いた物腰で静かに言った。
「はいはい。着替えるから出てってよ」
千宏はいつもと変わらなかった。
よかった。
ほっと、胸を撫で下ろすっていうのは、こういうことを言うのかもしれない。
出て行く際にチラリと千宏を見る。
――着替える気あるのかな?
千宏は布団に潜っていた。
珍しく眞人が静かだった。
「何でテメェが…!!」
眞人がずっと静かでいるわけなんて無理で、千宏が復活したことにより、一層元気になっていった。
「学校もクラスも一緒なんだからしょうがないじゃん」
ニーヤは家で眠ってるからいないけど、またいつもの日常が戻ってきた。
「早く席替えしないかな? コレの隣、ヤダ」
千宏が眞人を指していう。
「上等だ。こっちだって嫌だね」
顔を近づけて睨み合っている。
あ! いいこと思いついた。
「茜!」
「美鶴? 何ですか?」
「いいこと思いつきました」
僕は茜に耳打ちをする。
うん、すっごくいいことだね。
たまに眞人に言われる。
お前、天然なんだか腹黒なんだかわかんねェって。
どっちかっていうと、腹黒かな?って、今思ってみた。
茜が千宏の頭の後ろに手を添えた。
僕も眞人の頭の後ろに手を翳す。
そして、同時に前へと押し出した。
「痛!」
「ぅお!?」
2人の鼻と鼻とがぶつかる。
結構痛かったりするんだよね、これ。
茜がクスクス笑ってる。
うん、こういう毎日って、楽しい。
ニーヤがいないのが残念だけど、ね。
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