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嫌い




太陽がジリジリと照りつけている中、僕はいつもの公園にいた。


「ゆーひー!」


向こうからこちらに向かって大きく手を振っているのは皐月。
前に暑苦しいと言ったのはどこの誰だ。


「ごめんごめん。うっかり二度寝しちゃってさ」


「たく、もうなれたよ」

そう言いながら皐月もブランコに座る。



「まさか中3にもなってまたブランコに乗るなんて考えてもなかった」

「僕も」

二人で笑いながら熱を帯びた鎖を持つ。


暫くすると皐月の足元に猫が擦り寄ってきた。



「あ、猫」

猫に気づくとヒョイっと抱き上げ自分の膝の上に下ろす。


「最近多いね」

「なー」

猫の頭をなでるとそいつは気持ちよさそうに目を細めゴロゴロと鳴く。


そう言えば皐月は猫が苦手になったんじゃなかっただろうか。

そう言おうと視線を皐月に向ける。


「…」


ああ、またその顔。


最近よくみるようになった皐月のその表情。

前はそんなことなかったのに今思うと8月に入ってから様子がおかしいような気もする。




「皐月ー」


「んー?」


「最近なんかあった?」


「え…」

酷く驚いたように猫から僕に視線を移す。


「言いたくないならいいんだけどさ…」

言葉を濁しながらそう言い、視線を伏せた。




「…

ありがとー夕陽。」

皐月はにこりと笑いまた猫の頭を撫で始める。
そのまま意を決したかのように口を開いた。


「俺さー…



夏嫌いなんだ」



「…は…?」


「物はすぐ腐るし暑いし宿題は多いし、汗かくし。」



ケラケラと笑いながら、けれどもその口は止まらずに皐月は言う。


なんだ…
そんなことか

「はー…」


「え?どしたの夕陽」

「いや…」


心配して損した…



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