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「・・・・?えりだ・・・らだ?
聞いたことがないでござる。此処は、日の本ではござらんのか?」
「・・・いや。日の本じゃないな。」
「・・・・・・」
沈黙。
黙ってしまった少年を眺めながら、アキラは内心疑問に思っていた。
(・・・日の本、ね)
日の本。日本の昔の呼び方。
恐らく、否、間違いなく、目の前にいる少年は日本から来たのだろう。
話す言葉からして、まず間違いないはずである。
(平成に生きる若者が、日の本なんかいうかな)
再び、目の前にいる少年を見る。
服装は、素肌に赤ジャケットという、見るからに寒そうな格好である。
茶色の髪は長く、額には赤色の鉢巻をつけ、六銭文を首からさげた少年。
「そ、某達は、此処が何処か知っている者を探しておるのだ。・・・その、一緒に来てくれないだろうか?」
長い沈黙の末、少年は話題を変えて己の目的を話した。
一種の現実逃避のようなものなのだろう。
そんなことより
「・・・達ってことは、他にもいるのか?」
「はい」
そっちの方が、気になってしまった。
一度に多人数の異世界人・・・。
今まで、聞いたこともない内容に、アキラは思わず頭を抱えたくなった。
「いいよ、それじゃぁ、そこまで案内してくれるかな?」
とりあえず、全員保護しないと。と思い、少年に声をかける。
すると、少年は申し訳なさそうに口を開いた。
「・・・その、実は連れとはぐれてしまって。」
(つまり、居場所が分からないと)
どうやら、神様はアキラに休息を与えたくないらしい。
俯いてしまった少年に微笑みながら、アキラは手を差し出した。
「この森のことは、知ってるから。一緒に探そう。」
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