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「……なんか、言うことないわけ?」
「………ごめん?」
「……何が」
「……ごめん、なさい」
「意味分かんないんだけど」
「…………ごめんなさい」
壊れていく自分自身に気付きながら、
可笑しい自分を意識しながら俺はその言葉を吐き続けた。
『ごめんなさい。許して下さい。俺は、藍河が、好きなんです』
そんな意味を込めて。
だから、俺は“あれ”を合図かのように別れを切り出すことはしなかった。
出来なかった。それを藍河が求めていようが、
自分から好きな人から逃げるなんて、出来なかった。
―――……俺には。
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