[携帯モード] [URL送信]

贈する想いは
【4444リク】叶えて欲しい事。

部屋の前に座り込んでいる人影が映る、廊下に灯る明かりによって。
自分を待つ者など一人しか居ない、愛する恋人以外は。
「どうした?」
膝を抱えたその上から、少し身を屈めると声をかける。
引かれるように顔を上げ立ち上がると、扉の前を譲りそこを空けた。
ドアの鍵を開けると、ノブに手を置いた所で相手に呼ばれる。
く、と、服の裾を引かれると、こつり、と背中に当たる振動。
「何だ?アレン」
後ろから、きゆぅう、と、抱きつくと、そのまま動かない。
「アレン?」
「…ね、ユウ。少しだけ良い?」
「どうした?」
「ぅん…」
「来いよ」
背中からは離れたが服の裾からは離れず手にしたまま続く。
「座るから離せ」
「ん、」
寝具に上がり込み定位置に座ると、その横に倣い腰を下ろす。
「ユウ、貸してね。肩」
こつ、と、寄りかかると、黙ったまま目を瞑り何も言わない。
「アレン?」
くらり、と、傾いで肩から膝の上に、はたり、と、倒れ込んで来た。
胡座の上に転がったまま、じつ、と、顔を見詰めて視線を外さずに。
「何?アレン」
「ちゅー、して」
「は?」
「ちゅー。キスして」
顔を近付けて触れるだけの口付けをすると、途端に起き上がる。
「ぎゅー、して」
「アレン?」
「抱っこして、ぎゅーってして」
ぺた、と、寝具の上に座り込み、腕を広げて要求を示す。
膝と手をついて近付くと、上の半身を柔らかく抱きしめた。
「ぎゅー、だけじゃ嫌!抱っこ!」
抱きしめられたままに、不満が腕の中から告げられる。
放して壁に寄りかかると、反対に腕を広げてそれを待つ。
「おいで」
「ん」
膝を立てて座る足の間に嵌まると、胸に顔を寄せて抱きつく。
閉じ込めるように抱きしめると、その頭に顎を乗せた。
「ユウ…大好き」
「そうか」
「うん」
暫しそのまま、目を閉じて音と温もりとを感じて過ごす。
「ユウ。ね、…ユウ」
「何?」
「手、繋いで?」
左腕を上げて手を出すと、そこに肌色が重ねられる。
アレンの色と、神田の色が、交互に並ぶように指が絡む。
「…」
「何?アレン」
「んーん、」
「そうか」
「ん」
何が急かすも邪魔するも無く、寄り添うままに抱きしめる。
「ユウ、」
「ん?」
「よしよし、して?」
「よしよし?」
「頭を撫でて欲しいの」
「あぁ、解った」
背に回した手を頭に変えて、ゆっくりと滑らせて撫でる。
撫でては戻し、を、何度もなんども繰り返して髪を触る。
「ありがとう…」
「あぁ」
見下ろす頭に顔を近付けると、髪から覗く額に唇を当てる。
「口にもして」
見上げる顔に再び近付くと、額、瞼、鼻先とキスをして唇を塞ぐ。
少し長めにキスをして放すと、直ぐに下から唇を奪われた。
「僕からも。キス…してみたくなった」
「珍しいな」
「そう?…ね、」
「ん?」
「今日…ここで眠ってもいい?」
「あぁ」
「ぎゅー、して寝てもいい?」
「ぎゅー、するか?」
「うん。でも、先にぎゅーしたい」
「解った」
上掛けをはぐると、する、と、いつものように壁側にアレンが寝そべる。
「背中、向けてね」
「あぁ」
望むように背けて横たわれば、ぺたり、と、体のラインに添って張り付く。
隙間無く埋まるように同じ姿勢でくっつくと、背中に呼吸が当たる。
「苦しく無いのか?」
「ぅん、だいじょ…ぶ」
重なる体が温もりを作り、寝具の中をやわらかな温かさが包む。
小さく欠伸を噛み殺すのが見ずとも伝わり、静かに声をかける。
「ぎゅー、するか?」
「ん、する…」
ぎし、と、軋む寝具の上で身の前後を入れ替え、腕を伸ばして首下に入れる。
その肩の付け根に頭を乗せると、ゆっくりと重さを預けて来た。
頭を乗せた側の腕を曲げて撫でてやりながら、右手で肩を抱く。
きゅ、と、無理の無い程度に引き寄せて、互いの体温が行き渡る。
「ユウ…、ぁの、ね…」
「ん?」
「朝ま…で、このま、ま…」
「解った。このままで居てやるから眠れ」
「…ん、」
言葉が寝息となる呼吸に混じり、睡魔と友達になる様子を見守る。
「おやすみ」
ささやかな約束と望みを、珍しく甘えた恋人の願いを、ひそり、と、朝まで叶え続けた。

(終)

**********
【Request:めちゃくちゃ甘えん坊のアレンくんと、それに優しく対応する神田。より】INOKI様へ。
めちゃくちゃ甘える…の定義が甘かったらすみません。
リクエストありがとうございました。


[*前へ][次へ#]

8/32ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!