贈する想いは
5:【13784リク】
中から引き出して、捧げた両の掌に。
こくり、と、飲み下される唾の音が。
やけに耳について、奴の緊張を伝えた。
ぺた、と、床に座り込んだ身を少し前へ。
おず、と、顔を寄せてその先にキスをした。
「歯は立てるなよ。……お前の、好きにすれば良い」
「ん。……解った」
ちゅ、と、もう一度口付けると、舌を出す。
つ、と、端から根本に向けて舌先が滑る。
上、右、左、と、舌を動かし舐めると、口を開けた。
軽く銜えると、舌の真ん中で擦(コス)るように頭を動かして。
増えた唾液が絡み付いて鳴き声を上げる。
くちゅ、……ちゅ、っ、と、空気と混ざり。
「もっと舌を使うんだ」
「……ん、ぅ……むぅ、……っ、」
口に含むのも、快楽を生ませるのも初めてなら。
自分の事で精一杯でも仕方がない事だが。
奴は、ちら、と、視線を動かして、俺の顔を見る。
伺いながら、舌を、頬を、粘液を。
気持ち好くなるようにと、動かし、使う。
だが、惜しいかな、経験値不足は決定的で。
頑張りだけでは埋められないその技量。
「まだヤるのか?」
「……ん、く……っ、ぅ……」
まだ、と、視線で答えて、少しだけ頭(カブリ)を振る。
その口から無造作に、自身のモノを引き抜いた。
「んぁ、や!……やだっ、止めないからっ」
「止めねぇよ」
立ち上がると同時に、奴の襟首を掴んで引き寄せると。
そのままベッドに上向きに衝き倒して、体に跨がる。
「口、開けろ」
「……ぇ、」
「気持ち好くしてくれんだろ?アレン」
「……ん、する。したい」
「俺の動きに舌を合わろ」
「解っ……た」
「良い子だ」
覆い被さるその下で、苦悶する表情、乱れる呼吸、流れる唾液。
それに混ざり匂う自身の体液。
相手の事など考えず、自分の良いように、喉の奥を重点的に口内を犯す。
苦しさが滲み零れる声に、頬を伝う涙。
自分なら真っ平だと思うし、きついとも思う。
でも、奴の瞳には……、喜びしか見出せなかった。
目は口程にと言うが、そこに非難する光は無く。
従順に尽くそうとする、真心だけが見えた。
これで捨ててしまえば、忘れたと言えば。
奴は傷付き、落ち込むだろう。
どれほどの落胆を見せてくれるのか。
そろそろ手折っても良い頃合だと思った。
「出すぞ」
吐き出すだろうと思いながら、その中に。
花の最後を考えながら欲を吐き出すと。
零さずに受けながらも、びくり、と、体が硬直する。
そして、恐るおそる……と、言うような動きで。
ごくり、と、喉が動いた。
最後の一滴までを、綺麗に飲み干して。
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