贈する想いは
3:【13784リク】
なんだこいつ?と、若干の困惑と混乱。
虚仮(コケ)にした、と、言われているのに。
それでも……、と、怒らずに食い下がるとか。
どれ程のお人好しで馬鹿なんだ。
好きだから、だからこそ、相手からも好かれたい。
多かれ少なかれ、見返りを期待なんてしていなくとも。
心の隅や底に、相手にもそれを求める気持ちは、普通はあるだろう?
欲深く欲しがらずに、尽くす事のみを口にするとは。
初めて接した、そんな好きを求める人間に。
「お前は馬鹿だ」
「だって、……そんな簡単に、……諦められない、よ……」
「……アレン」
「ぇ、あ……、」
「返事をしろ。……何だ?」
「……ぁ、名前……、モヤシじゃなくて……、アレン、って」
「黙れ」
「……」
「そんなに言うなら、まだ関係は切らないでいてやるよ」
遊ぶのではなく、遊んでやれば良いのだ。
どちらも奴で遊ぶ事には違いない。
手間は多少必要にはなるが、まぁ、……良い。
待っていて動かないなら、動かせば良い。
言動を起こして、振り回して、その様を。
嘲笑(ワラ)ってやれば良いのだから。
もう少しだけ……、玩具で楽しむ方法を。
探して、遊んでみるのも悪くない、そう思い直し。
咲いているものを手折るのではなく、自ら種を蒔く。
水をやり、慈しみ、花開く手伝いを。
美しく咲き誇る最高の時を待ち。
自分の為だけの、花を育て上げる。
手を握り、抱き寄せる、髪を梳き、見詰め。
一つひとつ、駆引きを入れながら。
奴が夢中になるように。
もっと溺れ込むように。
囲い、少しずつ狭め、視界を自分だけに。
奴の世界の中心に俺が、常に、ふと、いつでも。
想い出し忘れぬように。
想いに焦がれるように。
植え付けて、そして。
捨ててしまえば良い。
そうすれば、楽しい遊びと、まだなるだろう。
なる筈だった……、その時までは。
挨拶だけの行為は暫し続き、頃合いを見てその先へと。
共に過ごす時が、その距離を詰めたからかのように。
自然な流れになるように、気付かれぬように。
俺が本当に変わったのだと、自分の想いが実ったのだと。
相思相愛とまで行かぬまでも、互いに間違いなく好いていると。
そう思われるように、優しさや労りを織り交ぜて、接して。
それに掛かる多少の自己犠牲は、仕方がないと割り切りをし。
柔らかく唇を合わせて、軽く抱きしめる。
顔を離して目線を絡めて、また引かれるように。
驚く程に下手だった奴のキス。
今は、少しは上達をした。
赤くなって、口付けは疎か、手を繋ぐ事も。
ハードルが高くて、指先が触れる事からで。
もどかしい程に、ゆっくりとしたごっこ遊び。
俺にとっては擬似である奴との恋愛。
偽物の思慕、偽物の心。
そうやって構築されて行く関係は。
虚偽で、見せ掛け……、そうある筈であった。
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