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贈する想いは
3.【7777リク】

綺麗な月の上がるその日が約束のその日で、アレンは然り気無さを装いつつ、朝から準備を行っていた。
小さな肩掛けの鞄には、着替えと金を押し込み、掴んで直ぐに出せるようにベッドに仕込んで。
普段と変わらぬ様に食事や鍛練をこなし、任務の入らぬ待機状態を、内心どきどきとしながら過ごしていた。
ぺた、と、机に頬を付け、何だか必要以上な疲れを認識しつつも、だらしの無い姿勢のまま、ペンを動かす。
「ウォーカー、文字が斜めになりますよ」
「んー…」
「今晩ですか?」
「んー…ぇ?はぁっ?!」
がばり、と、思わず姿勢を起こすと、あ…、と、思うも後の祭で、リンクから顔を反らして唇を噛んだ。
「……バレて、まし…た?」
「バレて無いとでも?」
「ですよね…。ぁのっ、」
「何時に待ち合わせですか?」
「リン、ク?」
「また蹴られたくは無いですからね。もう任務も入らないでしょう。…さて、貴方は今から病気です」
「……病…気、…は?」
「微熱の為に大事を取って、明日の休みは一日ベッドの中です」
「リンク!ありがとうっ」
「ストップッ、ウォーカー!」
蹴り倒した椅子が大きな音を立てる中、慌てたようなリンクの声が部屋に響いた。
「抱き付かないで下さい。まだ死にたくは無いんで」
「へ?」
万歳をした状態で動きを止めると、はたはた、と、瞬きを繰返し言葉を反芻する。
「…ぁ。だって、嬉しかったから。…つい」
「つい、で、死にたくはありません」
リンクに向けて、へらり、と、繕う様に笑うと、片手で額を押さえて、溜め息で応じられた。


**********


教団の外に迄送って貰い、休みの間には必ず戻る事を約束し、暫し見張り役の無い身分となる。
「いってきます!」
口だけを動かして意味を伝えると、面倒臭そうに手を振って、追い払う仕草をされた。
「色々言いつつも、面倒見が良いんですよね」
一度、にこり、と、リンクに向かって微笑むと、背を向けて、愛する彼の元へと駆け出した。
まだ若干の人通りはある時間帯、月明かりの落ちる夜道に建物からの光は、白い髪を目立たせる。
「リンクって本当に気が利くなぁ」
出掛けに頭に乗せられた帽子を深めに被り、髪を隠して指示された宿へと急ぐ。
街の端に立てられた宿屋は、次の街への出発点となる為、思ったよりも賑わっていた。
「すみません」
そう声を掛け、神田に教えられた偽名を告げ、遅れてきた彼の同室者となったのだった。


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