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贈する想いは
1.【7777リク】そのままで良いの。そのままが好いの。【R18】

「やっぱ、小動物みてぇ…」

肘を付いて軽く握った掌で顎の骨を支えつつ、視線だけでその目先の人物を追う。
サイズ的には小動物では無いが、ちょこまかと見える動きや、食欲に従順な本能。
自分に素直な自分勝手さや、周りが見えて無い危なっかしさが、小動物を思い起こさせる。
湯飲みに手を伸ばし、温くなったお茶に口を付けながら、神田はアレンを見ていた。
何時ものように蕎麦を啜っていれば、何時ものように大量の料理に埋もれながら運ぶ恋人。
常に付いて回る監査官も、食べ物に見え隠れしながら運ぶのを手伝っている。
食堂の長テーブルは決して狭くは無い、10人は軽く座れる代物なのだが、今は所狭し。
何十人分食うんだよ!な、程に料理が、正に堆く積まれ、ある意味圧巻な風景を作り出していた。
ぱん!と、手を合わせると、頂きます!と、嬉しそうに食事をはじめたその様子が。
必死に物を食べる小さな生き物、仔猫やハムスター、栗鼠等の様な愛らしさで、目を離せずにいた。

「なぁに、にやにやして見てるんさ。ユウちゃーん!」
「……るせぇ、糞兎。ラビのくせに、俺の名前を呼ぶなんざ、生意気なんだよ」
「酷っ!…って、もう慣れたさぁ。あ、俺Mじゃ無いからね!」
「……黙れ、呆け。つーか、横に座んな、前も却下だ」
「まぁ、まぁ。一緒に飯……食い終わる迄待っててさ!」
「……」
「で、何見てたんさぁ……お。アレン?何、アレンが気にな、!!」
横に座るな、と、忠告した、が、減らず口を叩いて従わ無ぇから、そんな目に合うんだよ。
心の中でそう毒づきながら、肘をラビの腹に突き込んで、強制終了を噛ますと、黙らせる事に成功した。
「〜〜〜っ!!ぃ……って…ぇ、……、っ」
「始めに諌めただろうが」
「ぅ、…も、…暴力反対、さぁ……」
「制裁だ」
机に突っ伏したまま、顔だけを神田に向けて、腹を擦りながらラビが喋る。
「なぁ…。アレンさ、最近やたら可愛く無い?」
「は?」
「いや、前から可愛らしかったけどさ。何て言うか…、」
「何だよ」
「そう、艶!色香が出てさぁ、可愛らしくも、愛らし…い……、ユウ?」
「あ゛?」
「何、怒って…」
「あ゛ぁ?」
「何でもありませーん」

他の奴の目にも可愛らしく映っていたのか、見んじゃ無ぇよ!と、牽制したいが…、そうも行かぬ。
アレンが自分の恋人だと、手を出すなよ?と、言えれば手っ取り早いのだが。
それは、余計な火種や争いを生む事になりかねない、教団と言う狭い世界の同性愛。
自分が同性愛だろうと何だろうと、他人にとやかく言わせはしないが、問題は恋人たるアレン。
優しくて、博愛主義で、自分が傷付いても人を傷付けたりは出来ない、そんな奴。
隠して自分だけのモノにしておきたいが、そうも行かない愛おしく可愛らしい存在。
他の奴からもそんな目で見られるなんて、もしかしたら狙われて、心変わりされたら……。
誰にも渡さない、渡したくないし、負けたくはない、奴は自分だけのアレンだ。
もっと、もっと、もっと、自分に傾倒し、離れる事なんて出来ない程に、此方を向かせ無くては。
今でも離れるとは思ってはいないが、ラビの口振りだと誰が狙って来ても不思議はない。
もっと自分だけのアレンに、もっと自分だけに染まるアレンに、もっと、もっと、もっと。

「ユウ?」
「……」
「どした?難しい顔してるさ」
「別に。とっとと食えよ馬鹿兎」
「はーいなんさぁ…」


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