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連綿たる経常
ぎゅっと!ね。

「寒ッ。この部屋寒いんですけど!」
「あ?だったらさっさと寝ろよ」
「えー、ベッドも冷たいんですけど!」
「俺は風呂る。先に寝て温めとけよ」


あっさりと、室温の低さと、寝具の冷たさはスルーされて。

部屋の主がシャワー室に消え、ひとりぽつりと寒々しい部屋へ残され。

お風呂で温まった体も疾うに冷めて、体温さえも気温に奪われて冷えるばかり。


「もぅ!ユウのばぁかっ」


ばさり!と、勢いよく上掛けと毛布をはぐると、体を滑り込ませた。


「寒っ!冷たっ!寒いー、冷たいー、ばかぁ」


温まった体で、温まったベッドに寝る神田を呪いつつ、きゅっと体を縮こませて。

じわじわと温もりが増えるのを、耐えて待つが、なかなか温まらない。


「早くー、早くー、寒いー、早くー、ユウぅ〜」


頭まで潜ったまま、ぶちぶちと独り言を溢すと、吐息の温かさを感じる。

少しだけ、強張った体から力を抜いて、少しだけ伸びて。

少しずつ、少しずつ、温もりと体を広げて、寒暖を入れ換えて行く。

やっと足を伸ばして、でもまだ爪先は冷たくて、もぞもぞと擦り合わせる。


「温まったのか?」
「…………」
「アレン?」


ぺふり、と、頭の部分に当たる衝撃、ぺふぺふ、と、続けて叩(ハタ)かれる。


「……ユウ、」
「んー?」


ちら、と、目元までを寝具から出すと、やわらかく髪が撫でられる。

湯上がりの上昇した体温と、しとり、と、した肌が気持ち好い。


「ユウ、」
「ん?」
「大変な事が起こりました」
「何?」


撫でられながら、上から見詰めてくる顔に、大事だとばかりに、そっと訴えた。


「右足のズボンだけが上に上がって寒いんです。足が」
「……下げたら、どうだ?」
「嫌です。動きたくないんです。暖気が減りますから」
「……で?」
「でも、右足だけ、布一枚分なのに微妙に寒いんです。何とかして下さい」


困ったように、少しだけ眉間に皺を寄せたが、頭から手を移動させて。

体を確かめるように動かすと、そぅっ、と、腕を差し込んで引っ張り下ろした。


「これで良いか?」
「はい!これで足先まで温まります!……あと、」
「何?」
「寂しくて心が寒いんですが……」
「それで?」
「ぎゅって抱きしめられると、心も体も温まると思うんですよね」
「了解。もう少し待ってろ。朝まで抱きしめててやるから」
「……早く、ね?」


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