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連綿たる経常
我慢なんて、

人差し指を、その顎先に掛けたまま。

やわらかな唇を、親指の腹でなぞる。


少しだけ、ほんの少しの唇との隙間に。

指の先を入れ込んで、下唇と上唇のどちらも。

下から上へ押し上げるように撫でる。

花が開くように、もう少しだけ。

進入を許すように開く唇の下側を。

ゆる、と、沈ませ、その弾力を楽しむ。


そう、視線は合わせたままに。


唇を、誘うようなその唇を。


指で犯すかのように擦(サス)りながら。



瞳に欲が、奴のその眼(マナコ)に色欲が宿るのを。
俺を求めるのを、指先では無い俺を求めるのを。


見逃さぬように、甘美に感じ入るように。
誘い絡め、口付けとその先を欲するように。



甘く溶けて、唇を汚すチョコレート。


口にした為の汚れを落としながら。


誘い込んで、誘って、……あぁ、抱きたい。



……早く、早く抱きたい、抱きたい。



任務中だから、と、尤もな言葉なんて、……要らない。



欲しいのは、お前の熱、お前の体、お前の嬌声。



買い求め、自ら与えるチョコレート。


好きだろう?と。


融点の低いそれは役目を果たし。



「……落ちた、」



だが、お前はまだ落ちない。


チョコレートはまだある。

ひとつ食べさせては口許を拭い、また、食べさせて。

キスで感じる事が出来るのだから。


この指先からの愛撫を感じて、受け入れて。



そして、……ヤらせろ。



チョコレートの無くなるリミットが先か。
奴が俺を求め強請るそのリミットが先か。
お前と、俺と、チョコレートのリミット。


あぁ、もう……、我慢……したくない。



「ユウ……」
「……ん?」

「その表情も仕草も甘やかしも反則」
「何が?」



また、チョコレートをひとつ。

唇に触れるように口に運び……。

その甘味が付着した指先を、舌が……掠めた。



「態と、でしょ?」

「何が」

「確信的ですよね。嫌いじゃないけど」



そう言って唇で指を食(ハ)むと、綺麗に舐め取る。



「でも、、今は無理で 」
「アレン」



続く言葉を遮って、じつ、と、見詰めて。

綺麗になった指先で、唇にやわらかく触れながら。

もう一度、甘くその名を口にする。



「アレン」
「…………だ、……め、」
「アレン、」
「だめ、……ユウ、呼ばない、で、」
「……アレン」
「その目、……声、……狡、い……」
「じゃあ、」
「……な、に、」
「キスして抱きしめるだけは?それも駄目か?」
「……だ、 」
「アレン、本当はお前をヨがらせたい。でも、それは我慢するから」
「……だ、め……、だって、」

「何?」

「僕が……、我慢、出来なくな……る、から」

「アレン、」
「途中で……、半端になんて……、沢山、……欲しく、なるもん……」



可愛い台詞に、潤んだ瞳、紅く染まる頬が……。

愛しい、愛しくて仕方がない。


我慢なんて……、嫌いだ。



「アレン、」
「あと、……あと数日だからっ、」
「……長い」
「戻ったら、……好きにして、だから……、お願い」
「アレン」
「……僕の、理性……を、壊さ、ない……で、よぅ」



お前のせいで、俺の理性の方が、今すぐにでも壊れそうだ。

我慢なんて本当に……、したくもない。

俺には似つかわしくない、似合わない、似合いたくもない、でも……。


愛らしいお前に免じて、我慢……する、セックスは。


だから、だから、今は……、今だけでも。



「ハグとキスは許してくれ」


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あきゅろす。
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