-混沌たる現と幻- そばに。:4。[刹那とロックオン] 『お前さん、たまにそうやって遠くを見てるよな』 そう言って飲み物を片手に、人懐っこく寄って来ると隣に立った。 『刹那、何を見てる?』 『ロックオン…』 いきなり刹那の肩に腕を回し肩を組むと、その耳元に口を近付けて囁く。 『寂しいのか?』 こそり、と、耳に届く、低い大人の男の声と、珈琲の香り。 同性の自分からしても魅惑的な、その声音と雰囲気に誘われるように頷いていた。 『そうか…』 回した腕を動かして、くせっ毛の黒髪をロックオンは、くしゃ、と、雑ぜた。 何度か繰り返し、その動作が撫でる行為へと変わる。 こつ、と、ロックオンが頭を寄せると、甘いチョコレート色の髪が黒髪と混じった。 刹那は何も言わずにされるがままに、だが、視線は足元に落ちていた。 『お前さんは頑張り過ぎだ。たまにはお兄さんを頼れよ。な?』 『…』 『ま、そこがお前さんらしいんだがね』 頭を擦り寄せると、ロックオンはそのまま刹那の頭を荒く撫でる。 ぎゅう、と、引き寄せたまま、それをひとくち口に含んだ。 ふわ、と、珈琲が香る。 そして、ふい、と、刹那の前に入れ物をちらつかせる。 『半分こしようぜ、仲良しだもんな!』 黙って受け取ると口を付けた。 思わず眉間に皺が寄る。 その様子をロックオンは目を細めて笑う。 『あ、ブラックは駄目だったか』 『…』 『可愛いな、刹那は』 そしてまた髪を撫でる。 くす、と、笑うロックオンの声と、触れた体温が心地好い。 自分に、家族のような繋がりと温かさ、そして、優しさをくれるロックオンに感謝した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |