-混沌たる現と幻- そばに。:3。[アレルヤと刹那] 苛立つ渇きを癒す為に、ふら、と自室を出ると、その場所を目指す。 冷蔵庫に入れたままの酒類の瓶を取り出すと、それはとてもとても冷たかった。 瓶の底をもう1本の瓶の王冠に当て栓を開ける。 すぐに微かにアルコールの匂いが零れた。 底が栓抜きとなっているレトロな瓶。 今ではなかなかに珍しく、味もデザインも気に入っているもの。 普段は呑まないが、見かけるとつい買ってしまうのだ。 そのまま口を付けて、ぐぅ、と、嚥下すると、何も入ってない胃に熱さが生まれる。 呑むにしても酔う程に呑む事は無い。 たが、今日はこれで存分に潤いたい気分だった。 久しぶりのアルコール独特の感触にひとつため息をつく。 『珍しいな、アレルヤ』 思わず、びくり、と、して振り向くと、青い制服の色が目に飛び込んで来た。 『刹那!あぁ、びっくりした』 『…すまない』 開けたままの冷蔵庫を閉めると、薄暗がりがその場を支配する。 手にしていたもう一本を開けると、刹那に差し出す。 『ね、一緒に呑んでくれ無い?』 『あぁ』 そのままアレルヤは冷蔵庫に寄り掛かり、刹那はその場に立ったままアルコールを呑み込む。 互いに口数が多い方では無い。 気の利いた話も振り方も成されないが居心地は悪くない。 『…アレルヤ』 『ん、何?』 『大丈夫か?』 『…』 静かに、静かに、刹那が短く問いかけて来た。 『あは、ごめんね。心配させて』 『無理に笑うな。アレルヤはアレルヤであればいい、それだけだ』 『刹那…』 静かに、静かに、見つめる視線と、その声に感じられる真っ直ぐな刹那の気持ち。 素直に向けられる真摯な優しさにアレルヤは感謝した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |