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-混沌たる現と幻-
そばに。:2。[ティエリアとアレルヤ]
もう冷めているのでかき混ぜる必要など無いのだが、手にしたスプーンで無駄にカップの中身を玩(もてあそ)ぶ。
陶器と金属のぶつかる、から・かん、と、した音が無駄に響いて聞こえる。
『何をしているの?ティエリア』
『アレルヤ…』
ティエリアのカップの中身はあまり減ってる風は無いが、湯気を失っている事から、そんなに短い間此処に居る訳でもなさそうだった。
『アレルヤ…』
『なぁに?』
『…』
『ティエリア?』
視線をカップに落としたまま、また中身をティエリアはかき混ぜる。
『ね、それ、煎れ直そうか?』
『あ…いや、いい』
『じゃあ、それは僕が貰うよ。ね、ミルクティーにしない?』
話し掛けながらも、既にアレルヤは紅茶の準備をはじめている。
新たに湯を沸かし、茶葉とポット、カップにソーサーと並べて行く。
その横で、ティエリアのカップの中身はティーバックを使ったものだと、捨てられた物が訴えていた。
何も言わないティエリアに何も聞かず、手際よく紅茶を煎れ、甘めのミルクティーが出来上がる。
甘味は人を優しく癒してくれる、魅力的なアイテムだ。
煎れたばかりのミルクティーをティエリアの前に置くと、アレルヤは先程からのカップを引き受ける。
『どうぞ』
『…あぁ、…あり、がと』
ふぅう、と、息を吹き掛けると、茶葉と甘い香が辺りに溶ける。
口を付けるティエリアを眺めながら、アレルヤは何も言わない。
『おいしぃ…』
『よかった』
ゆる、と、視線を合わせると、煎れてくれた甘いミルクティーのように、アレルヤは優しく微笑む。
ティエリアの気持ちを、体と心から、やわり、と、解すように。
『…アレルヤ、…』
『はい』
『いや…うん、…』
『なぁに?どうかした?』
『…美味しい』
『そう?それはよかった』
冷えた紅茶を口に運びつつ、嬉しそうにアレルヤは微笑む。
『ご馳走様。美味しかった』
『いつでも煎れるからね。飲みたく為ったら教えて?』
『…あぁ、そうさせて貰う』
いつでも…と、心で繰り返した。
ミルクティーように、優しくて甘い安らぎをくれるアレルヤに感謝した。

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