其々の砌にて 藍 「声が無いと加減が判らねぇ。きつく攻めるぞ」 体から返される反応を見ればある程度は解るのだが、折角ならば声が聴きたいのが本音。 「声なんて気にして居られない位にするか?」 実際攻めて余裕を無くせば簡単だが、堪える姿も堪らないから。 「アレン、目も閉じるな。俺を見ろ」 手を止めて従うのを待つと、ゆっくりと目線が合う。 「アレン。怖く無いんだろ?ヤるんじゃ無いのか?」 今度は縦に顔を動かして肯定の意志を示しながら、瞳を反らさずにいる。 「言ったからにはちゃんとしろよ。」 「解、…て…ます」 良い様に扱われているのが恥ずかしいのか、ふっ、と、視線が外される。 AKUMAには決して退かず無鉄砲に挑むのに、今は気弱さが微かに滲む。 怯えや恐れを含んでいても、それであっても嫌がってくれなければ。 屈しないと撥ね付けてくれなければ、堕としても堕ちても楽しく無い。 まだ堕ちてしまうには、早い、その内そうなるにしても、だ。 まだまだ染まり行く段階な、その初々しさがある今を楽しみたい。 「声…は、嫌……」 「じゃあ、目は反らすな。それで加減してやるよ」 少しだけ譲歩を見せて安心を植え付けると、やり遂げると言う思いを宿して見据えて来た。 「キスの時だけは目を閉じろ」 そう告げると優しく口付けながら、まだ熱の名残を残す下をゆっくりと弄る。 何度か軽くキスをした後に顔を離せば、負けまいとする意識を宿す双眸。 きちんと約束は守る気らしいが、それは卑怯と思われたく無いからか。 それとも今度は状況に流されまいと、冷静になる為に言い付けを守るつもりか。 どちらにしろ、じとり、と、自分だけに囚われる様は悪く無い。 「何処まで強がれるか楽しみだ」 「強がって、んっ…、やぁ……」 話ながらもズボンの中に手を忍ばせて、下着の上から先端を親指で撫でながら筋をもなぞる。 「神、田なん、か…にっ、ぁ…う」 「俺に、何?」 「…っあ、僕だっ…て、出来…るん、っ」 途切れながらも、またからかわれ、馬鹿にされぬように見え透いた嘘をつく。 別に、負けた勝った等無い只のセックスに、その嫌いな相手の申込みの優位に立ちたがるのか。 日常茶飯事のいざこざの小さな積み重ねが、思わぬ所でこのように役に立つとは。 とりあえず今日はカテナイと、マケタのだと、経験の差で捩伏せてみようか。 「今はイかせてやるよ。お子様にサービスで」 「またっ…ぅ、馬、鹿に……うぁん、」 中からソレを取り出して、じわ、と、少しずつ零れ出す液体を指で塗り込むように先を擦る。 指を動かして滑る度に、ひく、と、悶え、はっきりとした存在を段々と示して行った。 唇を噛んで、必死に顔を見て、頬を紅くしながら強がる姿に虐めたくなる。 「ぅ、あ……、やぁ、ん……っ」 「可愛い声を聴かせてくれるなぁ」 一層強く、きり、と、挑むように見て来ると、無意識に上着の端を握っていた手が動く。 右腕を上げ親指の付け根辺りを噛んで、声を漏らさぬようにまた我を張る。 「強情。ま、頑張れば良いさ」 立ち上がり固くなったモノでは、イかせるまでそう長くは無いだろう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |