其々の砌にて
緑
くる、と、反転し捕らえた腕から抜け出すと、真似をするように上着を床に捨てた。
背中を向けたままなので表情は見えないが、多分…、虐めたくなる顔には違い無い。
「お子様アレン。覚悟は?」
「やりますよ。…全部、脱ぎ…ます、か?」
「いや。脱がす楽しみもあるからな」
ベッドに腰を下ろし中に着ていたシャツを脱いで投げると、未だ後を向いた体に腕を伸ばす。
「来いよ、アレン」
振り返る顔は、向ける瞳は、噛み締めた唇は、握られた拳は、楽しさを運んで来る。
「どうした?アレン」
「わか…て、ます」
掠れる声に緊張が混じり、小さく震えているのがまた面白い。
差し出された手に手が重ねられ、そこにも微かに揺れが見出だせた。
「怖いのか?」
「そんな事、無い…です」
強く引いてから倒してやろうかとも思ったが、優しく引き寄せて隣へ誘(イザナ)う。
「感じるのは解るか?」
「…わか、り…ます…よ。それ…くらぃ…」
「自分でシただけか」
「……」
隠そうと、ぎり、と、見詰める視線とは裏腹に、頬は朱く彩られ真実を伝えた。
「まぁ、良い。お前も楽しめ」
「…煩、ぃ…っう、ん」
精一杯であろう悪態にキスで応えると、一瞬、ぎぅ、と、目を瞑る顔が視界の端に映った。
軽く触れて、何度かその行為を繰り返して、息苦しさから唇が開くのを待つ。
思わず薄く開いたであろうその隙間に舌を滑らせると、後に逃げる頭を両手で押さえる。
噛み付くかと故意に唇を執拗に嘗め、口内に少しずつ侵入する深さを増やす。
その度にびくびくと動く体の振動が伝わり、新鮮な反応にキスをしながらも笑ってしまう。
「っ、ん…ぅう、……」
アレンの口から漏れる声も飲み込むように、唇全体を覆いキスをして一旦開放する。
「おい、大丈夫か?」
固く目を閉じて固くしている体を揺すってやれば、恐る恐る…と、瞼が開いた。
「……ぁ、…か、ん…だ」
「可愛い反応だな、アレン」
優しく抱きしめてやれば、また体が、びくり、と、した。
「いいぜ、止めてやっても」
「平、気…ですっ、てば」
「ふぅん、そうは見えないがなぁ」
顔を動かしてすぐ横の耳に、こそり、と、囁くと、耳朶に歯を立てた。
「ひゃ、んっ…ぁ、や……」
甘く噛んだままに舌で嘗めては啜ると、そのままキスを頬に移す。
煽るように音を立てて唇を当てては、また他の場所に口付けを施して行く。
硬直したように動かない体に、少しだけ悪戯を仕掛ける。
衣服の上から爪を、掛かるか掛からないかの加減で、胸の突起を刺激した。
面白いように体が跳ねると、合わさるように悲鳴が零れ落ちる。
かり、と、強弱を付けて爪で引っ掻いてやれば、徐々に固さを示して来た。
「胸でも感じるのか?」
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