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其々の砌にて
一編。

頭では判っていても体が求める。
知らなければ…。
今更ながらに思うが、…でも。

手を伸ばしても生まれるものは違う。

それは自分だから。
彼では無いから。

でも。

知ってしまった体はそれを欲する。

素直に、従順に。
快楽が欲しい、と。

「っん、…は、ぁ……」
浅ましいと思いつつも自身の生殖器を弄る。
ただ吐き出すだけの行為なら、そんな感情は沸かなかった。
その行為は男性としては当たり前の事だから。

でも。

想像するのは彼の事。
彼が施す愛撫を思い浮かべて。
彼が見せる優しさや、顔、仕種を記憶でなぞりながら。
「神、田っ…あぁ、ぅ…」
名を呼ぶも声が返る筈も無く、自らの音だけが返る。
上から漏れる声音と、下からの漏れる水音が。
吐き出す吐息に熱が含まれ、彼(カ)を呼ぶに切なさが混じる。
「っ…、ユ、ウ…ぁう、」
指先に絡む体液を先端に塗り付け、滑らせ、押し、爪を掛ける。
気持ち悪い訳では無いから精液が分泌されるのだ。

でも。

物足りない、足りない、足りない、欲しい。
彼が欲しい。
神田ユウが欲しい。
名前を呼んで触って欲しい。
いやらしい事をしたい、されたい。
一緒に、同じに、互いを感じていたい。
一人は嫌、もっと気持ち良くなりたい。
「ユウぅ、…んぅ、っは、ぁ…」
どくり、と、吐き出される欲望に自らが汚れる。
手に溢れる液体に口を寄せるが、彼の物とは違う味。
「…何、やってんだか」
放ってあったタオルを手に取り拭うと、手早く身支度を整えた。





今日は別段これといった用は無い。
ふらり、と、教団内をうろつきつつ、眼だけで彼を捜す。
そろそろ帰還する頃合いだが、未だに会う事が出来ずにいた。
心が彼を求めれば、意識が彼を求める。
鎌首を擡げる蛇のように、押さえ付けた感情が再び襲う。
ぎり、と、唇を噛み締めて頭を振るが”欲しい”と奥底からの熱が冷めぬ。
居ない間の部屋への出入りは許されていたが今の自分には辛い。
「物欲しそうな顔してんじゃねぇよ、バカモヤシ」
突如肩を組まれたと同時に耳に届く声に体が動かない。
「アレン?」
「…か、ん……だ」
咄嗟に下の名前で呼びそうになるが、ここが回廊である事を思い出した。
「誰も居ねぇよ。アレン」
横を向けば会いたくて仕方の無かった、大好きで堪らない彼の顔。
「…ユ、ウ、ユウッ!」
「あぁ、ただいま」
抱き着くアレンを抱き留めると、その耳に口を寄せて神田が囁いた。
「なぁ、ヤらせろよ」
「うん…」
何時もなら紅くなるアレンが何の戸惑いも無く頷いた。
「何?ユウ」
「いや、珍しいな」
「だって…」

”ユウガホシクテタマラナカッタ”

「淫乱だな」
「…誰のせい?」
「お前だろ。…泣くなよ」

”オレゴノミデウレシイヨ、アレン”

こそり、と、囁きを交わし、求める言葉と温もりを、確かめるように抱きしめ合う。
「大好き、ユウ」
「当たり前だろ?」
軽く唇触れて直ぐに離れた、体も。

ちらり、と、瞳だけで誘い誘われる言付けを交わすと、歩いて来た人々に混じり別れた。





ノブに掛かる腕を掴まれたと思えばドアに押し付けられ都合良く閉まる扉。
背後で掛かる鍵音と自分の甘い声音と水分の絡む音の三重奏が耳に届く。
「ぅ、んっ…は、…」
真夜中が待ち切れずに訪ねたのは神田の部屋。
日頃ならば自分と判っていても、解っているこそか、返事もせずドアも開けない彼が珍しい。
「遅い」
「っ、ごめ、…んぅ」
言葉の途中で息も奪われ、その合わせた隙間から舌が入り込んだ。
上を、下を、舌先だけで舐め、歯の内側の肉をなぞり、唾液を行き渡らせつつ舌を絡める。
キスしかしていないのに、もどかしくあるキスだからか、体に熱が篭り現実に触れ求める事が気持ち好い。
「淫乱」
「ぁあ、…っ」
弱く、だが確実に反応を始めるモノを、上から摩るようにして指先で柔らかな刺激を加える。
ひくり、と、小さく跳ねるように動くソレを悪戯するように擽り焦らす。
「や、んぁ…はぁ…」
「気持ち好いか?アレン」
乱れ始める可愛らしい恋人の耳元に顔を寄せると、甘噛みをしながら舌で舐める。
くちゅり、と、わざと水音を上げると、脳に直接響く音の近さからかアレンの肩が揺れた。
「ユ、ウ…、っん、ぁ…」
「何?どうした、アレン」
明らかに楽しんでいる、だが言葉を紡ぎたくとも指に、声に、匂いに酔い流される。
「いじ…わ、るっ…ぅ…」
「おや、気持ち好く無いか?」
辛うじての文句も交わされ、下を掴み込んで、握っては緩めを繰り返し煽る。
ずるずると床に座り込む体に合わせて、神田もその場に膝を付き執拗に弄ぶ。
膨れ存在を示すその場所に直接触れて欲しい欲望が生まれ腰が動きに合わせてしまう。
「やっぱり淫乱だな」
「だ…って、んぁ…あ、ぅ」
「アレン。オネダリしてごらん?」
「や、…ユゥ、ぁ」
「何?止めるか?」
乱れる呼吸に潤む瞳、朱に染まる頬が誘って来るが、もう少しだけ眺めて居たい気もする。
「アレン?」
「…ば、かぁ」
「ほぉう、そんな事を言うのはこの口か?」
片手で首の後ろから支え掴むと、逃がさないように固定してから口付けをする。
勿論、下をも遊び追い詰めながら、的確に好む所ばかりを、だがイかせはしない。
舌を吸い上げ口内に招くと、軽く歯を立てながら、また吸い舐めてこちらも焦らす。
名残惜し気に口を離すと、どちらとも判らぬ唇を汚す唾液を舐め取った。
「アレン?」
「っは、…ユ、ウ……」
「快楽はいらない?」
「…や、ぃ、るぅ…、ちょ…だぃ」
「何を?」
「ユウ…く、だ…さぃ…ぁう」
「今日は特別。次はちゃんと言わせるぞ?」
こくり、と、頷く頭を一撫ですると、姫抱きの要領で抱え上げてベッドに降ろす。
「ユゥ、…も、イキた…ぅんう」
「正直なアレンは好きだよ」
バックルを外しズボンと下着に手を掛けると、少しだけ腰が浮かされる。
「上手くなったな」
「ユ…ゥ、な……に、っう、ぁ」
「何でも無い」
先端に指を滑らせ、くるり、と、円を描くと指先に滲む体液が絡み付く。
口を寄せて括れ迄を含み、ちぅ、と、音を立てて吸っては出しを繰り返す。
ひくひくと揺れるそれを支えると、ゆっくりと味わうように舌で嘗め上げる。
熱を帯びた表情で見遣るアレンの視線と、かちり、と、目線が合うと、その頬の朱が鮮やかになった。
銜えたままに妖艶に神田は笑うと、絡める舌の動きを早くし、好い所ばかりを攻め立てて行く。
「っあ、…ぅ、ユウっ、…くぁ、」
先端から増えて行く溢れる体液を舐め取り、唾液で滑らせ、歯や唇をも使い刺激をする。
硬さと質量を増し欲望を吐き出したいと訴える口内のそれを放さぬようにより奥に含む。
掌と指先を使い袋の部分を握り込んで、そちらにも緩やかに快楽を施して追い詰める。
「ゃあ、…も、……ユ、ゥ…っ、んっ」
どくり、と、震え、気持ち好さを体現し生み出される液体を零さずに受け止めてそのまま飲み込んだ。
荒く浅く息をしつつも、蕩けた色っぽいままのその顔を優しく眺め、乱れた髪を整え撫でる。
「好かったか?」
ぼんやりとしたままに小さく頷くその酔った表情に思わず笑みが零れ落ちる。
「可愛いな、アレンは」
「…ユ、ウ……僕に、も」
「何?」
「ユウ、の…舐めさ、せて?」
整いつつある呼吸と共に言葉を繋げると、怠そうに半身を起こして神田の首に腕を回す。
「ユウが…、欲しぃ……」
「俺の何が欲しい?」
「ユウの全てが」
欲望の光を宿した艶やかな瞳を神田に向けて、求めるモノをしっかりとアレンは告げる。
「ね、ユウ。ユウを頂戴」
顔を寄せて、ねとり、と、舌を絡める口付けをすると、自らの味を拭うように舐め上げる。
「ユウ、ユウを…頂戴」
燻る置き炭のように熱を発しながら、神田からの許しを求め眼(マナコ)でも訴える。
「では、オネダリしてご覧」
「ユウの…ユウのペニスを……僕に、下さ…い」
「欲しい?舐めるだけか?飲むだけか?」
「っ、あ…。舐めて…挿れ、た……い…です」
「そうだ、な。自分でシてみせろ」
弧を描く唇に笑いが縁取られ、誘うようにその体を横たえると見詰め返す。
こくり、と、小さく喉を鳴らすと、ゆくり、と、腿に跨がり先ずは自分の上着を脱いだ。
次に相手の釦を外し開(ハダ)けると、シャツを上にずらし小さく鬱血点を作る。
体の中央の窪みをなぞり臍まで舌先を這わすと、愛おし気に右手で胸を撫でた。
「ユウに触れる…」
ふぅっ、と、その様子に微笑むと、その手に手が重ねられ温もりが伝わる。
「寂しかった、とか?」
「ぅん、…心も体も寂しかった」
儚く悲しいなかにも嬉しさが滲む綺麗な笑顔を浮かべると、下腹部より下に顔を寄せる。
ベルトを外しながら、歯でファスナーを噛み下ろすと、下着をずらしモノを引き出す。
舌先で持ち上げるように舐めると、そのまま飲み込める所迄口に入れた。
唾液を塗り滴らせ何度も出し入れを繰り返しながら自らの背後に手を伸ばす。
後ろにある蕾に指を寄せる為に合わせ目を暴くと、そこを人差し指で撫で押した。
片手では彼を支えて口で舐め、片手では自分自身の身を緩め使えるようにする。
暫くの間、唾液に混じる僅かな声と息遣い、仕える者の音だけが聞こえた。
「もう良いだろう」
その声を合図に後ろから指を抜くと、寄せていた顔を離し体液で濡れた口を拭う。
「挿れ…て、いぃ?」
「あぁ。ゆっくりと、な」
少し上側に動いて股関節に少し掛かるくらいの位置で膝立ちをする。
後ろ手に右手で握り、片手で割れ目を広げ先端が上手く当たるように調整して行く。
「んぁ、ん…っ、う…っは、」
先が何度か滑り入口との接触を拒むが、その擦れる感触さえも気持ち好くて堪らない。
くちゅ、と、小さく音が鳴ると、漸く待ち侘びた場所へとの凹凸が嵌まる。
体を支える為に彼の腹筋の上に両手をつくと、ゆくり、と、体内に挿れ込ませ始めた。
「気持、ち…好ぃ、っあ、…ユウッ、んぅ…」
腰を落としながら妖しくも揺れる視線に、軽く開いた口から覗く舌が誘うようだ。
「綺麗だよ、アレン」
腰を浮かせて前立腺を擦るように動き、より気持ち好くなる手助けとなる。
「ひゃぅ、ん、や…ぁ、」
跳ねる体から素直な反応を読み取ると、腰を引いては上げてそこばかりを虐める。
「ぁ、く…ぅ、…ユウ、ぁ、んっ…ん」
「可愛い声だな、アレン」
「じぶ、んっ…で、…シろっ…てぇ、ぁ、やぁん…」
「可愛いからな。サービスだ」
そう言い終わると同じに腰を掴むと、一気に中に押し込む為に引き寄せた。
「あぁあああっ、…は、ぅ、んっ」
「上手く飲み込んだな」
「ばっ、かぁ…、ゃ、」
「ほら、動けよ」
下敷きにした腹に手をついて覗き込むように、体を前に傾いたままに小さく声を漏らす。
「ユウ、が…いっぱ、ぃ…」
「お前の中は気持ちいいよ」
「うご、く…ね、っんあ、…」
「自分の好いように腰を使え」
見下ろす側と見上げる側、どちらも幸せそうに笑うと、それを合図に律動を始めた。
体を支えながらゆるゆると体を上下に動かして、受け入れる事に体を慣らして行く。
「っ、ん…は、ユウッ、…」
「アレンの好き、に…しろ」
擦られる気持ち好さが確実に両者に生まれ、繋がる安心感が心を満たす。
出し入れに合わせて前後にも腰を使い、微妙に当たる位置を変えながら快楽を貪る。
「ユ、ゥ…きも、ち……いぃよ、ぅ」
「俺、も…っ」
満たされる気持ち好さに自分の快感を優先しそうに、いや、しているかも知れない。
だが、耳に入る声にそれぞれが酔いを見出し、好さを与えている事に幸せになる。
「っ、…きも…ち、いぃ?…ユウ、も、」
「好い…よ、ア、レ…ンっ」
寝台の軋む音が増え、詰める息遣いも増えて荒くなり、意味を成さぬ声も増えて行く。
「ユ…ゥ、なかにっ、…ちょ、う、だ…ぃ、っは、んぅ、」
「っ、…、アレ、ン……出す、ぞ」
体に心に視線を絡めて接続し、それぞれの限界が近い事を溺れながらも認める。
「ぅ、ん…ユウ、ちょ…ぅだ、ぃ…ぁん、は、ぁ」
「、アレンッ」
腸に当たる震え振動を感じるそれから与えられる精液の温かさに体が喜ぶ。
「あぁ、んっ、…ユ、ウ」
繋ぎ目から体液が溢れ白く汚す中に、先程僅かに残っていたのか自らの白色も混じった。
ぐちゅん、と、引き抜き滴らせながら、よたり、と、寝具に倒れ込んだ。
「アレ、ン…」
首下から腕を伸ばして肩を抱くと、引き寄せてその頭を肩に乗せさせた。
左手の指先で乱れた前髪を上げると、額に触れるだけの優しいやさしいキスを贈る。
「好きだよ、大好きだ。アレン」
「ぼ、く…も、だいす、き」
その姿勢のまま、きゆぅ、と、相手の左肩に右手を掛け擦り付き甘えて抱き着く。
「幸せだな」
「ぅん、…幸せ」
久しぶりの匂いと体温、触れ会える喜びと二人で過ごせる場に優しい時が流れた。



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