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パロ
高校生攘夷と坂田の弁当



透き通るような晴天。桜もすっかり散ってしまい、穏やかな春風もだんだんと湿り気の混じった初夏の風へと変わりつつある。







「………………あ、」









何とも爽やかな陽気の日、昼食休憩のチャイムに弁当の蓋が落ちる音が混ざった。





























「うわーやっちまったー…」


自分の弁当箱を苦い顔で見つめて唸るのは銀髪の生徒。長袖のシャツの袖を折って捲っていて、だらしないほどに開襟している


「どーしたがか?弁当箱落っことしたかー」
「いや弁当箱は無事のようだぞ…一体どうしたんだ」
「虫でも入ってたんじゃねェか」


銀時の声に3人がわらわらと集まってきた。

黒髪もじゃもじゃグラサン長身、アジアンビューティーいかにも真面目、眼帯おちび見た目は不良。


だいぶ暑くなってきたというのに桂だけきっちりと学ランを着ている。
辰馬は一足先に夏が来ているようだ、半袖のシャツを着ている。
派手なネクタイをつけてるのは高杉で、長袖のシャツを折らずに着ている。日焼け防止だろうか。



「別にいつも通りの弁当箱じゃねェか…っててめェ」


銀時の弁当箱は2段重ねだ。3人がそれを覗いてみると、片方にはちゃんと白いご飯が入っているが、片方は空っぽである。




「アッハッハッハッまさかおんしおかず入れてくるの忘れたんかアッハッハッハッ」
「うるせーよバカモジャ!寝坊したんだよ!!」
「まさか貴様がここまで白米を愛しているとは」
「人の話聞いてた?」
「よく聞け銀時ィ…米をこれでもかっつーまで噛みやがれ、そうすればでんぷんが甘くなる」
「んなの聞いてねーんだよ!!いくら甘党たァいってもおかずはほしいわァァ!!」
「…仕方あるまい、俺のおかずを分けてやろう」



桂はそう言いながら、おもむろに自分の弁当箱を取り出す。
何だかんだ言っても桂は真面目な生徒だ。友が困っているのに放っておく事は出来ないのだろう。
銀時はほっとため息をつく。


「悪りーなヅラ」
「確か5時間目は体育だろう?たんと食べておかないと駄目よ!!もう!!」

何故かお母さん口調で自分のおかずを銀時の空っぽの弁当箱に入れた。

しかしそれはおかずにしては白すぎるように見える。


「…って何で白米だァァァ!!!!!!」

叫びながら桂に飛び蹴りを食らわす銀時。

「な…何をする!!反抗期か」
「お前ホント人の話聞いてた!?」
「白米を愛しているのだろう?」
「てめーの勝手な解釈だろーがァ!」
「これ以上ないほどの素晴らしいディナーだと思うが」
「白米と白米なんてどこ行ったって出てこねーよバカ」


ヅラに期待した俺がバカだった、と再びため息をつく。
そして辰馬を振り返って見る。

「オメーボンボンだしよォさぞ弁当も豪華なんだろ」
「アッハッハそーでもないぜよ」
「オラ早くおかず出しやがれ」
「仕方ないのーわしのお気に入りあげちゃる」


後ろにキラキラ光が見えそうなくらいニッコリとした辰馬から手渡されたのは、ふかふかもっちり。


「パンンンン!!!!!!だから何で主食なんだよォォォ!!!!」
「そのコッペパン特注で作ってもらったんじゃー」
「どーでもいいんだよそんなん!!おかずがほしいの俺は!!」
「ごはんにパン乗っければ解決じゃ!」
「炭水化物同士そんなに仲良くさせてーのかバカヤロー」


まずこいつらに頼るのが間違いだったのかもしれない。こいつらに一般人の常識が通用するはずがなかった。










…いや、まだ一人残っている。


一番常識離れしてそうだが、こういうことに関しては誰よりも常識がありそうだ、あの眼帯は。

恐る恐る振り向き、高杉に話しかける。



「…たーかすーぎくーん、おーかずーをわーけてー」
「ふざけんじゃねェ何で俺が」
「お前しか頼れる奴がいねーんだよ!!なっ頼むぜホント!!」
「………フン、いつか倍返しな」
「するするする!!サンキュ…」



お礼の言葉が途中で止まった。
嫌々高杉が弁当箱に入れてくれたのは、それはまあ素敵な色の。


「かしわ餅ィィィ!!!!」

腹の底から渾身のツッコミを入れ、高杉に空手チョップをお見舞いする。


「……にしやがんだてめェ人がせっかく分けてやったっつーのに」
「だから何でどいつもこいつも主食なんだァ!!おかずの定義わかってる!?」
「節句が近いの知らねェのか」
「おかずが何かを知らねーのかてめーら」



こいつらを頼ること自体根本的に間違っていた。
ツッコみ疲れ、銀時が深いため息をついたその時チャイムが鳴った。



「おっ予鈴じゃあ〜そろそろ更衣室行くかの〜」
「えっ何お前ら」
「今日は器械体操か?俺の素晴らしい回転を見るがいい」
「何ちゃっかり食い終わってんだオメーら!!」
「んじゃ先行くぜェ」
「オィィィ待てボケェェ」






銀時の制止も虚しくさっさと行ってしまった。瞬時に教室が静まり返る。






「……ホント何なんだアイツら最悪最低極まりねーぞ」







誰もいない教室に残っているのは、初夏の匂いと射し込む光と奇妙な弁当。









もう一度大きいため息をつき席につく。

おかずとは言えないおかずを白米と一緒に食べながら小さく呟いた。














「……いつか覚えてろよアイツら…」














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高杉は無駄に行事に萌えてるといい
変 換 自 重 (^ω^)
燃えてるといいな

2009.4.16



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あきゅろす。
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