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パロ
学生攘夷でプール掃除





「だぁーコケだらけじゃねーか!!」




燦々と照りつける太陽に愚痴をこぼしつつ、プールに集った4人組。

去年の夏から放置のプールには、青々とした苔が不気味なほど浮遊している。プールの周りを囲む木々と同じ緑色だというのに、どうしてこうも近寄りがたいのか。



「なんっで貴重な休日にプール掃除なんざしなきゃなんねーんだ!!」
「アッハッハッハすべては高杉のせいじゃー」
「なんだと貴様!!初耳だぞ!!」
「てめー何やらかした!?」
「掃除の時間ロッカーぶっこわした」
「貴様ァァァゴミを増やしてどうする!!」
「ムシャクシャしてたからてめェらのせいにしてみた」
「アッハッハッハこのクソガキ罪のないロッカーとわしらに謝るぜよ」
「したら罰としてプール掃除だそうだ」
「ふざけんなァァァァ」



学ランで掃除すると汚れてしまうのは目に見えているので、ばっちりジャージを着用している。

今日は陽気に恵まれ、気温も汗ばむほどだ。プール掃除日和といってもいいかもしれない。


明らかに高杉の責任だがなってしまったものはしょうがない。さっさと終わらせて帰るのが得策だ。
パン、と銀時が手をたたく。



「よっしゃさっさとやろーぜ!まず水抜くぞー」
「待て銀時!今日はプール開きだろう?水を抜いてはプールに入れん」
「てめーは何を聞いてたんだァァ!」
「大体今の状態のプールに入ったら一瞬でマリモじゃ」
「いいぜェヅラ入ってこいよ」
「あっちょっ待て高杉!まだ準備体操が…!!」



制止する前に高杉が桂をドンと押していた。
プールの縁に立っていた桂は哀れそのまま苔の中へ。




「ヅラァァァバカかァァァ!!!!」




落ちていく桂を、腹をかかえ爆笑しながら目で追っていく3人。
派手な音を立てて桂が苔の中に消えた。



「オィィィ高杉いきなり何やってんだァァ!!」
「アイツの望みを叶えただけだろ!!」
「高杉おんしホントにタチ悪いのー!!」
「見ろ、上がってきたぞ!」


苔の中からのっそりと顔を出す桂は、まるでナマズのようで。

しかも右手にヌルヌルした何かを持っている。


「おおーいヅラ!!どうじゃプール開きは!!」
「オイ待てあいつ何か持ってっぞ!?」



桂は苔にまみれた顔に満面の笑みを浮かべる。

そして右手を高々と上げて叫んだ。






「最高のプール開きだ!!ナマコが採れたぞ!!」


「「「何でだァァァァァ!!!!!!!!」」」











































「…ったくよーどこにもナマコなんざいねーじゃねーか」
「ヅラてめェどんなマジック使いやがった」
「俺達はナマコだ」
「ナマカじゃヅラ」
「ナカマだろ」
「ナマコを大量採取して北方南方あらゆる場所にうりさばき天竺を目指す…そう、俺達の旅は始まったばかりだ!!その名も『採集記』」
「視聴率低迷ですぐ打ちきりじゃ」
「どーせヌメヌメしてるだけだろコノヤロー」
「R指定入んじゃねェか」
「ナマコに!?」



とりあえず水を抜き大きいブラシでプールを磨き始めた銀時と桂。高杉と坂本は大きいシャワーで方々を流している。

苔だらけの桂はやはり見ていて心が痛むので、シャワーをかぶり一人だけびしょぬれである。





「…っつーかよ…無理だろコレ終わんねーよ…」


垂れてくる汗を拭いながら銀時が呟く。
いくら4人のスタミナが人並み以上とはいえ、さすがにこのプールの広さには敵わない。



「そんなに暑いなら涼しくしてやるよ銀時ィ」
「!?まさかてめーやめっ……!!」


早くも愚痴を吐き始めた銀時に、高杉がシャワーを向ける。
シャワーの勢いはなかなかで、滑稽な銀時の顔が水ごしに見える。



「アッハッハッハ!!金時もびしょぬれじゃ!!」
「……ぶっはぁ!!!!高杉テメー殺す気かァァァ!!」
「んだよ涼しくしてやっただけだろ」
「バカ杉ィィィ!!辰馬、やれ!!!!」
「任しとき!!!!」
「てめェふざけんな俺は暑いなんて一言も…!!」


至近距離からの水攻撃。避けられるはずもなく高杉に直撃する。


「……ゲホッ!!…っくっそこのバカモジャが…!!」
「待て!!わしは金時の命令に従っただけぜよ!!」
「てめェもびしょぬれの刑だ」
「うわー!!ヅラ助けてほしいぜよ…うおっ!?」


シャワーを刀さながらに構えた高杉から逃れようと全速力で走り出した坂本。

しかしプール内で走れば滑るのはごく自然なことで。
そのまま桂に衝突し、滑り滑って周りの掃除道具をぶちまけた。



「貴様ァァァ!!天竺への道を邪魔するつもりか!!」
「てめーは何しに来たんだァァ!!」
「アッハッハッハすまんのーヅラ!!ナマコは元気かのー…ぶっ!!」



こけないようにそろりそろりと追いついた高杉が、思いきりシャワーをぶっかける。どさくさに紛れて桂にも直撃する。



「思い知ったかァ…天竺に行くのは至難の技なんだよ」
「オメーもノリノリだな!!!!」
「……っぶはー!!いやー涼しくなったのー!!」
「ゲホッゲホッ!!…くっ…俺は…諦めんぞ!!何としてでも天竺に向かってみせる!!」
「オィィィ!!どーすんだプール掃除!!」




はっ、と我に返る4人。

ピタリと喧騒が止み、聞こえるのは流れ出るシャワーの水音だけ。


見渡せば、無造作に散らばるブラシ。坂本の衝突であちらこちらに飛んでいった掃除道具。洗剤は蓋が取れて大変なことになっている。



この状況をどうするか。

目を合わせた4人の思考回路は驚くほどシンクロしていた。
ニヤリと笑みを浮かべると、一斉にプールサイドへ上がる。
そして各々の鞄を荒々しく掴み取り走り出す。






「俺知ーらねーっ!!」
「俺も知らねェー」
「もとはといえばおんしのせいじゃろ!!」
「実に有意義なプール開きだった!!」
「まだ言うかテメー!!」




行く行く教員にばれたら相当なお叱りを受けることだろう。だが、えも言われぬ安心感がある。何せこの4人は。









「俺達はナマコだーーーー!!!!」
「一緒にすんじゃねェあんなヌルヌルと!!」
「アッハッハッハ!!」
「逃げっぞーーーー!!!!」











水に濡れた靴が特有の音を立て、初夏の風の中に消えていった。









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西遊記ブームだったんでしょうかw
ナマコのおいしさはガチ

2009.5.16



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あきゅろす。
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