パロ
学生攘夷in夢の国
よく晴れた空。辺りを見渡せば、ここが日本とは思えないような建物が並んでいる。
青々とした海に浮かぶゴンドラ。透き通る船頭の歌声。欧州を匂わせるような優雅な雰囲気が漂う。
だが、だらしないラフな格好をした男がその雰囲気をぶち壊していた。
「……アイツら遅くね?」
首からぶら下げた円柱のケースからポップコーンを取りだし頻りに口に放り込む銀時。加えて某ネズミの耳がついたカチューシャまで装着している。ふてぶてしい表情を浮かべ、一人立ち尽くしているがどうやらノリノリのようだ。
……そう、ここは某夢の国。
「……何が悲しくて野郎4人でネズミーシーになんざ…お、辰馬じゃねーか…っ……!?」
ブツブツと呟きながら、遠方に黒モジャを発見し手を降ろうとした、が。
「きーーーーんときーーー!!おんしにしては早いのお!!」
走り寄ってくる辰馬は何故か、上裸で海パン姿にビーチサンダル。
一瞬にして白目を剥いた銀時が光の速さでツッコむ。
「てっ…てってっててめェェェェェェ何のつもりだァァァ!!!!!!」
「おんしこそ何しちゅう、変な耳がついちょるぜよ!!」
「当たり前だここは夢の国だ」
「今日は海に行くと聞いたんじゃが」
「ディズニーシーだろォォォォォ!!!!『シー行こう』っつったらここだろ!!!!!!」
「シーは海じゃ!!」
「おまっ……!!周り見ろ!!怪しまれてんじゃねーか!!」
周りの視線を痛いほど感じ、いたたまれない気持ちになる。特にミッキーからの視線が痛い。無言でこちらを見つめている。
「……ヅラの自由研究の手伝いでディズニーシー行こうっつっただろ!」
「アッハッハッハッそういえばそうだったのー」
「オメーいっぺんミッキーに殴ってもらえ」
「おっ高杉とヅラも来たぜよ!!」
始めからこんなんじゃ先が思いやられる、と深くため息をついた銀時の目に入ったのは。
「……あの黒いネズミ俺らのこと狙ってやがる…ぶった斬ってくるぜェ…」
坂本と同じ服装でサーフィンボードを刀代わりに構える高杉と、
「すまぬ、誘いをかけた人物が遅刻とは」
同じく海水浴の格好でスティッチの耳をつけている桂。
「………てめーらなァァァァァ!!!!」
銀時の怒号に、ミッキーが走って逃げた。
「……まぁとにかくだな、服装は大した問題ではない」
「問題ありありだろうが何人にガン見されたかわかんねーよ」
「…こっちずっと見てんのに瞬き一つしねェ黒ネズミのが問題だろうが……!!」
「お前の脳みそが問題だ」
「アッハッハッハ!!とにかくヅラの研究に協力するぜよ!」
「俺が調べたいのはタワー・オブ・テラーについてだ」
往来の人々の目線をダイレクトに感じながら、高くそびえ立つホテル型アトラクションに向かう4人。周りを囲む情景は大変素晴らしいというのに、服装でまるで台無しである。
最早どうにもならない、と開き直った銀時が桂に尋ねる。
「で、何について調べんだよ」
「ポップコーンの蓋を開けたままタワー・オブ・テラーから落ちたらどうなるのか、ということだ」
今度は3人まとめて凍りついた。
そして桂を掴み、全力で来た道を戻り始める。
「なっ何をするゥゥ貴様らァァァァ」
「こっちが聞きてェェェェェェ」
「ヅラそりゃまずいぜよ!!ミッキーにどんな罰をくらうか!!」
「やっぱな……黒幕はアイツか……!!」
「離せ!!話すから手を離せ!!」
とりあえず引きずるのをやめた3人は、怪訝な面持ちで桂を見る。
「俺の見解では…エレベーターが落ちた瞬間、大量のポップコーンは慣性の法則でその場に留まろうとする。ここでポップコーンが宙に残されるわけだが、エレベーターが中間辺りで止まった時に俺を追いかけるようにポップコーンが落ちてくるはずだろう。そのとき、ポップコーンは元通り容器に戻るか、ということが気になって夜も眠れないのだ」
半ば呆れ返った視線を向けていたが、辰馬の眼がどんどん輝いていく。
「アッハッハッハ!!そりゃ面白そうじゃ、是非やってみるろー!!」
「オイ落ち着け辰馬俺らミッキーにやられるぞ!!しかもそんなんポップコーンが降ってくるまでにてめーがちょっとでも動いたらシメーじゃねーかァァァ!!」
「やってみなければわからないではないか…!貴様武士の魂はどうした!!」
「そのセリフそっくりお前に返すよポプラ」
「ポプラじゃない桂だ」
「高杉テメーも何か言ってやれこのアホ共に」
流し目で高杉を見た銀時だが、黙りを決め込んで一言も発しようとしない。
「……オイシカトかコノヤロー」
「………てる」
「あ?」
「……俺は…乗らねェで待ってるっつってんだよ……」
「…………………」
銀時が下から顔を覗きこむと、何ということだろう青ざめて目を伏せている。平時の威勢は何処へやら、下唇を噛みながらなるだけ視線を合わせないようにしている。
沈黙を保ち続ける高杉の心境が手にとるほどにわかった銀時はじめ3人は、一斉にニヤリと目を煌めかせ高杉の肩を掴んだ。
「「「やだなぁ、俺達4人で一つじゃないか」」」
「アッハッハッハ!!みなぎってきたぜよーー!!」
「うっせぇ喋んなバカモジャ!!」
「おお………幻想的な雰囲気だ……なぁ高杉!」
「………ネズミのバカネズミのアホ」
長々と並び、アトラクションへと乗り込む4人。ポップコーンは見つからないようにどうにか隠して進んできた。
ナレーションと共にだんだんと上がって行くエレベーター。
そして、今生の自分に別れを告げるために手を降る。高杉の手だけ見えなかったが。
「いよいよだぞ………!!銀時、ポップコーンの蓋を開ける準備はいいか!!」
「テメーが持てェェェ!!!!」
「俺だって少しは恐ろしいさ!手は離せないのだ」
「アホなのお前?」
「アッハッハッハ!!ヅラはあべこべで困るぜよ!」
「………アブラカタブラアブラカタブラ………」
「高杉ィィィ取っ手掴んどけバカ!!」
最早周りの客が怪訝な顔をして見ているのもお構い無し、上裸が3人の時点でも既に浮いているというのに墓穴を掘りすぎである。
馬鹿騒ぎをしてる間に、エレベーターは最上へ。
夢の国の全貌を一瞬見たと思ったら、そのまま急降下。
「「「っぎゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」」」「アッハッハッハッ」
結局絶叫系に耐性があったのは坂本だけらしい、他の客の耳をつんざくような悲鳴が響いた。ポップコーンを持つべき人物は坂本だったのだろう。
坂本以外、疲労の表情を浮かべタワー・オブ・テラーから降りてきた。そんな4人を待っていたのは、ポップコーンにまみれた上裸の男達が写った写真。目を逸らしたくなるような猛烈な表情である。あごが外れそうだ。
本来の目的が大したことではなかったとはいえ、あまりにも悲惨な写真に苦笑いを浮かべた銀時が呟いた。
「…………『僕たちは変態です』って研究結果が出たな」
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ポップコーンの実験
誰か一緒にやりませんか^^^^
2009.7.28
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