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攘夷ばっかり
攘夷ズ風邪リレー4(アンカー辰馬)





「ハクショーイアッハッハッハ〜」


春も終わり少しずつ初夏に近づいているというのに、この一室の悪循環は終わらない。鼻声気味の笑い声が部屋の外にまで響く。





「お前バカだろ!!何ちゃっかりうつされてんだ!!」
「わしだって風邪くらいひくろー」
「初めて知ったぜ…もじゃも風邪をひくんだな」
「早口で言ってみるがいい高杉」
「もじゃも風邪をひくもじゃもかじぇをひく」
「はい罰ゲーム〜パンツ一枚になってもらおう」
「ヅラてめェぶった斬るぞ」
「アッハッハッガハッ」
「菌撒き散らしてんじゃねェェ!!」
「大体テメェもう薬飲んだんだから早く寝やがれ」
「それがさっぱり眠くなんないんじゃアッハッハッハッ」



辰馬のチャームポイントとも言える豪快な笑い声はこの状況では仇になる。銀時から始まった風邪菌リレーは何とか辰馬でアンカーにしたいが、こうも大胆に笑われると相当な菌が空気中に浮遊していると思われる。3人に不安がよぎる。




「貴様に笑うなと言っても無駄だろうな…」


半ば呆れ気味で桂が呟く。
すると高杉が蒲団を辰馬の上にまるごと被せて封じ込めた。




「もがあああなにすっ何するんじゃ高杉もがもが」
「治るまで閉じ籠ってろ」
「高杉さすがにやりすぎだ!!治る前に窒息するぞ!!」
「いやこんぐらいがいいんじゃね?」
「きっ金時もがもが降りるぜよもがもが!!」


蒲団に丸め込まれた辰馬の上にどかりと座る銀時。

すると不気味に蒲団が蠢き、辰馬はアンパンマンよろしく両手を掲げて銀時と高杉ごと蒲団をはねのけた。


「アッハッハッハッこれしき何のそのじゃ!!」
「何がだオメーはねのけてどーすんだ!!!」
「テメェ菌持ちなんだぞ自覚しやがれ!!」
「ん?確かにわしは金持ちじゃが」
「読み方変えんなァァァ!!」
「わかった坂本…今から俺達が3つだけお前の言うことを聞いてやる、そうしたら早急に寝るがいい」
「何神龍気取ってんだヅラ!!」
「致し方あるまい、何かに満足したら眠気も襲ってくるだろう」
「それはありがたいのー!!望みなら溢れるほどあるぜよ」
「チッ…まぁこのまま菌撒き散らされるくらいなら聞いてやるぜ」



だがこいつのことだ、実現できないような無茶なことばかり言ってくるに違いないとたじろぐ3人。
覚悟をして構えると辰馬がゆっくりと口を開いた。











「そこにあるティッシュとってほしいぜよ」



へらりと言った辰馬に、銀時がティッシュ箱の角が当たるように豪速球を投げる。


「てめェェェホントにこれでにいいのか!?神龍にお前はティッシュ頼むのか!?」
「鼻水が滝のように流れてきて困ってたんじゃ!助かるぜよ」
「オィィィ!!おいオメーらも何か言ってやれ…」


振り向くと、ティッシュを一枚一枚引っ張り出して丸めポコポコ投げてくる高杉と、大量のティッシュ箱を選別している桂が目に入った。


「オラやるよティッシュ」

「うむ、これはパルプ100%だな…しかし300枚しか入ってないな」


その懸命な様子を見て銀時は白目を剥く。


「何か俺が悪者みてーじゃねーか!!お前ら優しすぎだろ!!」
「これも菌を滅するためだろ銀時ィ」
「お前のやってることの成果が知りたいよ」
「ほら銀時も手伝え」
「大体ヅラこんなティッシュどっから引っ張り出したんだ!!」
「ヅラじゃない神龍だ」


かみすぎて真っ赤になった鼻を指差しながらもう大丈夫じゃという辰馬。
本当にこんなんでこいつは寝るのか、と不安を抱いているのは銀時だけのようだ。



「で、2こめは?」





「ツチノコがほしいぜよーアッハッハッハッ」


あまりにも1つ目の願いとかけ離れているため3人から飛び蹴りをくらった。





「バカかてめェ!!さすがに無理なのわからねェのか!!」
「アッハッハッハ!!」
「そんな生き物がいるなら俺がほしいさ!!名前はツッチーに決定だ」
「お前は馬鹿に決定だ」
「ティッシュみてェに身近なものにしやがれ!!」
「それもどーなんだ!?」
「オイ早くしろツッチーを捕まえにゆくぞ」
「勝手に行けヅッラー」
「オイ聞いてんのか坂本…」






一度ボケ始めたら止まらない辰馬に怒濤のツッコミを入れていたが、ふと辰馬の声が聞こえなくなったのに気づき振り返る。



健やかな寝息をたてていつの間にか眠っていた。




その様子を見て一瞬呆然とした3人だったが、銀時の言葉を皮切りに各々呟く。





「……いや〜良かったなーようやく寝やがって」
「……ま、全くだツッチーなんぞいるはずがない」
「……ようやく菌の危険性がなくなったな」














沈黙が続く。








聞こえるのは、辰馬の寝息と鳥の囀ずりと風で襖が揺れる音。




耳を澄ませば今にも辰馬の笑い声が聞こえてきそうだ。







だが、聞こえない。




















胡座をかいてじっとしていた銀時が、もぞもぞと辰馬に近づきひきつった笑顔で辰馬の髪の毛を一本引っ張る。


「……あれれ〜?辰馬くん白髪があるよ〜」






ゴホンと咳払いをして桂は立ち上がり、辰馬の横に散らかっている布団をこれ見よがしにバサバサと畳む。


「……そ、そろそろ朝のようだな…ツッチーを探しに行かねば」






襖に寄っ掛かり座っていた高杉は、寝そべるとそこらじゅうに散らばっている丸めたティッシュを辰馬に投げ始めた。


「……………………」























気まずそうに視線を交わす3人。








――――――――何をやっているのだ。


散々早く寝ろ、と言っていたくせに。

笑い声が煩い、と喚いたくせに。







今感じている心もとなさは、何だ。











思い返せば、凄惨な戦場で自分を見失わずに済んでいるのは、この男の快活さと包容力のおかげかもしれない。


無自覚なのか、意図的なのか。もし意図的なら、この男相当な策士か。ともかく今はそんなことは問題ではない。








この部屋の静けさが、心細い。




















再び目を合わせた3人が苦笑する。




「全く勝手な奴らだな俺達は」
「勝手なのはアイツだろうが、騒ぐだけ騒いで寝やがって」
「まさか3つ目の願いを俺達が使うとはなー」










無造作に散らかるティッシュを手に取り、3人一斉に辰馬に投げた。













「………早く起きやがれコノヤロー」

















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これでまた銀さんに戻って延々とループでもしてればいい
仲良し攘夷が見たいよー!

2009.4.29


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あきゅろす。
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