攘夷ばっかり
シリアス攘夷前編
烏の声がやけに響くある春の夕暮れ。
いつもの騒がしさはどこへやら、閑静な万事屋で銀時は椅子に座って俯いていた。神楽と新八はというと、お妙の道場に遊びに行っている。
――――――――何だこの胸騒ぎは。
窓から外を見ると、それはもう見事に真っ赤な空が目に入った。すべてを焼け尽くすような夕暮れ。
この胸騒ぎは何だ。
何か良くないことが起きる。いや確証はない。全くない。だが、長年の勘が脳に必死に訴えている。何かが起きる、と。
どうか何も起きないでくれと願っていた矢先、慌ただしく電話のベルが鳴り心臓が跳び跳ねた。
『―――とき、銀時聞こえるか!ヅラじゃない桂だ!高杉が、あのバカが斬られた!詳細はわからん、今坂本にも連絡を取っている…何!?傷の容態!?詳細はわからんと言っているだろうが!焦るのはわかるが落ち着けお前らしくもない!!今から俺は…』
焦ってなんかいない。
わかっていた。幕府に目をつけられ危険視されている高杉は、このまま無事でいられるわけがないことくらい。
現に銀時と桂ですら今度会ったらぶった斬るとまで豪語した。それは前から、わかっていたのだ。
なのにいざとなったら何だ。
何でこんなに動揺している。
「邪魔するぜよ銀時!!ヅラから聞いちょるか!?」
辰馬が背負っている、血塗れのやつは誰だ。
「高杉拾ってきたきに布団用意しとおせ!!」
辰馬お前何でそんなに必死な顔してんだ。いつもみたいに笑ってこいよ。
「腹部の傷が深すぎるんじゃ…もしかしたら」
聞きたくない。お前は何を言ってるんだ、辰馬。
何を言っているか、わかっているのか。
速い鼓動で張り裂けそうな胸を押さえて声のする方を見る。
全身血塗れでぐったりして辰馬に背負われている高杉に、ゆっくりと近づいていく。
馬鹿じゃねーの誰に斬られたんだよ、お前こんなんで死ぬタマじゃねーだろバカ。
心臓の鼓動が速まるのを止められない。何も言葉が出てこない。
あの凄惨な戦場で過ごした日々のおかげで、人並以上な精神力はあると思っていた。
だが、嘗ての戦友がこんな姿になるというのはここまで耐え難いものだったのか。
「邪魔するぞ銀時!!高杉は…高杉の様子はどうだ!!」
桂の声が聞こえた気がするが、ただ耳を通り抜けていくばかりだ。
震える手でゆっくり、ゆっくりと高杉の髪に手を伸ばす。
血が固まってどす黒くなった髪に、もう少しで手が届く――――――――
すると何ということだろう、高杉の顔がゆっくりと持ち上がった。
トイレの花子さんよろしく、高杉は血にまみれた顔をしっかりと銀時に向け、持ち前の眼力で穴が空くほど銀時を睨み付けた。
「地獄から這い上がって来たぜェ………ヒヒヒ」
これでもかというほどに口を三日月形に開きニヤリと笑う。
もう既に恐怖で半分失神している銀時の袖を右手で掴み、ドスの聞いた声でトドメだ。
「お前も引き摺りこんでやるよ銀時ィ……」
完璧に白目を剥いた銀時は見事にショートした。
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えへへ\(^o^)/
後編に続きますw
2009.4.1
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