【切手のない封書】
1
両親が離婚した。
俺が、高校を卒業した年のことだ。
大学に進まず、ホストの道を選んだ俺の生き方をお互いのせいにして、家族は崩壊した。
「お前が、ちゃんと見ていないからだろう」
「あなたが家庭を蔑にしたからでしょう」
「「だから、ヨシツネが…ああなった」」
ああなった、という言葉は、俺が彼らが望んでいた道から外れたという意味のようだった。
「何がいけなかった?」
「何が不満だったの??」
「「ホストなんて水商売、人間のクズがやるモノだ。何故、そんな道を選ぶ」」
俺が幼い頃から、世間体ばかり取り繕うのが何よりも好きな両親だった。
彼らの望むように高校を卒業した後は名の知れた大学に進学し、名のある企業に就職して…いずれ、何処か良家の娘と恋愛か見合いで結婚をする。
勉強も人付き合いも恋愛も、同年代の奴ら以上にこなせたし手に入ったから、そういうことが出来なかった訳じゃない。
けれど、俺はいつも思ってた。
両親の望むように存在しなければ、在る価値が無い自分は、この先、生きていく意味があるのだろうか?と。
彼らにとって、俺が選んだ”ホスト”という仕事は、まったく価値の無いものだった。
クズという言葉の意味を知らず口にするような人達の発言ではないから、本当にそういう位置づけで考えていたんだろう。
高校卒業後、彼らの望むモノにならなかった俺は、彼らの中で“クズ”になった。
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