【切手のない封書】
恋人 −Yoshitune−
−…プルッ…プルル…ー
『はい』
「ハルキ?俺だけど…今、何処だ」
『え、家ですけど』
「…そう。ちょっと出られるか?」
『何処までですか?』
「ウチまで」
『ヨシツネさん家?…別に構いませんけど、どうしたんですか?』
「お前を呼ぶのに、理由がなきゃ、ダメ?」
『…ダメってことは…』
「じゃあ、来いよ…。出勤にはまだ時間があるだろう」
『…了解しました。…あの…』
「何?」
『…いや、何でもないっす』
「…そう。待ってる…」
今朝方、とある男からの手紙があった日…俺は少し眠ってから恋人を家へ呼び出す。
なんとなく恋人の顔を見ながら、飯を食いたくなった。
それを告げても良かったけれど、黙っていたのは早くあいつに会いたかったから。
ハルキは、自分の思う事を押し込める癖がある。
そのくせ、一度引っ掛かるとそれを気にして、口より先に身体が動く。
さっきの電話みたいに、あいつが口ごもる時はその行動が顕著だ。
きっと、あと一時間もすればあいつはウチに来るだろう。
あいつのそういう性分は俺とはあまりにも真逆で、どうしてあんな風に振る舞えるのか不思議でならない。
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