束縛


「え、何コレ」


付き合ってちょっとした頃、鍵っ子って昔やったよね〜、なんて話をした。
そしたらある日、ユゲさんが鍵の上穴に赤い紐を輪に結えてペンダントみたいにした鍵をくれた。


「ん?鍵だけど?」

「や、それはわかるけどさ。何このヒモ?これって、子供が鍵失くさないように首からぶら下げるためのヒモでしょ?!」


気怠い身体を起こし、隣でベッドヘッドに背を凭れるユゲさんに、ちょっとイラついた声で言う。
30歳のユゲさんと、21の俺に会話の共通点があった。それは嬉しい。

でもさ、だからってちょっとコレはないんじゃないの?


「まぁまぁ、そう怒るなよ。合鍵、要らなかった?」

「要らなくはないけど!なんでこういうことするかな。ガキ扱いすんなよ」


鍵につく赤い紐をビンッと引っ張って、不要な細工に抗議する。


「えー、何。赤い紐が気に入らない?」


つっ…とユゲさんが張り詰める紐を指先で左右になぞる。

指がエロい…じゃない!

違う。
そうじゃないだろ、俺の言ってるコトは!!


「肌身離さず、俺の部屋の鍵を持ってて欲しいなぁ〜って。思ったんだけど…だめ?」


紐をなぞってた指が、指先から二の腕へと移動する。
ユゲさんは少し細めた目で自分の指先を追い、肩まで指と一緒に辿った視線を、急に俺に向けてきた。

だめ?とかそういう問題でもないだろ、オイ…


「普通に鍵だけくれればいいじゃん。キーケースぐらい俺だってちゃんと持ってるんだから」

「んー…それじゃあ、だめ。いつもつけてて欲しいんだ、君に」

「だーかーら、いつも持ってるならキーケースに入ってたって同じだろ?!」


ユゲさんがちょっと困ったような顔をする。

なんだよ、こっちの顔だろその表情は!!
外すぞ、外すからなこの紐!

俺は、鍵につけられた紐を解こうとした。
その時、あいつの手が俺の手を止めた。


「お願いだから…それ、してよ。その紐解くのは、俺のこと必要なくなった時にして」


ユゲさんから目が離せなくなった


…何、ソレ…。


赤い紐は運命の赤い糸、鍵は俺とあんたを繋ぐ鍵、とか言っちゃう系?


オッサンがなに夢見ちゃってんの。


バッカみてぇ…



「……仕方ねぇな、俺は大人だからその我儘聞いてやる。その代わり、この紐が切れたら…あんたがまた新しい紐結べよ?」



そうじゃなきゃ、こんな俺に分の悪そうな話、聞いてやれるか。




俺は、あんたの世界で一番の物になりたい。


束縛?


されないなら俺がしたいぐらいだっつの。

















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