BLで切ない話をお願いしますっ!-2-
俺は今、考えている。
これからの人生と、これからの俺の…
「ちょっとォ、ねぇ、ユゲちゃ〜ん!ねぇ!ちょっとってばァ!!」
「…えっ?…あ、あぁ、ごめんね山田さん。ちゃんと聞いてるよ」
スキンヘッドにフェミニンなワンピースを着てバッチリ化粧でめかし込んだオカマちゃんが、カウンター越しに俺の肩を揺する。
…ヤバ、仕事中なのにボケっとしてた。
俺の勤める繁華街の不動産事務所に、彼女(?)が来たのは…確か一時間前。
俺は、小一時間程入口の接客カウンターで、大事な大事なお客様のトークに付き合わされ…否、耳を傾けている。
「ちょっと、やだァ〜。何ぃ、ボケっとしちゃってぇ!もしかして、恋?…って、もぉ〜ユウカって呼んでっていつも言ってるでしょぉ〜」
「…あ〜、や、ごめんごめん。恋?って……そんな訳ないでしょー。ユウカさん、ところでお店は?いいの?時間」
事務所にある、掛け時計を指差す。
あらヤだ!と彼女は骨張った手で口を押さえ、ぺろっと舌を覗かせた。
「ママに叱られちゃ〜う、そろそろ行くわ!あ、今度マユミが引っ越したいって言ってたから連れてくるわねぇ〜」
まったねぇ〜、と事務所へ投げキスかました彼女は、腰をくねくね店外へ出て行った。
「「はーい、またご贔屓に」」
数名の従業員の声に重ねて、手を振りながら後ろ姿を見送ると同時に、口から零れる長い溜息。
「…はぁ…。すんません、タバコ行きます」
煙草を一本くわえて外に出る。
ユウカって、ユウヤと語呂似てるから…なーんか、嫌。
思い出すじゃないか、あの子のこと。
しかも、恋?って…何だよ、恋?って。
オカマの勘は、女以上か?
―…カチッ…ボッ…―
細い煙が筋を作って昇っていく。
つい三日前に、メールがきてた。
『次、いつ会える?この前エッチした時の返事、貰ってないんですけどー(-_-メ)』
だって。
そうだね、俺は答えてない。
…いつ会える?…
いつ、ってそんなの君が望めばいつだって。
なんて言ったら、俺の気持ちがバレちゃうだろ。
言えるか、チクショウ。
大人は狡いんだよ。
んで、臆病なの知ってるか?
オッサンはね、お気に入りの君を、もどかしさでまだ縛っていたいんだ…
傲慢?
利己的?
そんなの、俺が一番わかってる。
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