ま、こんなもん。
(格闘家ニトメン)






「いくわね!連牙飛燕脚!」
「斬光時雨!」
「屠龍!」
「タイダルウェイブ!」


素早い脚技に鋭い突き、そして的を追い回す幾本の矢が続き、とどめの大洪水。
それらをまともに食らった魔物≪モンスター≫は、水が引くと共にその姿を消した。


ニト、ロイド、チェスター、ルーティというお決まりのメンバーは、ここ、鉱山に足を運んでいた。
順調に蝕むモノを始末してはいるが、これから先、更に手強い敵が待ち受けていると考えられるので、少しでも力となるよう鍛練に来ているのだった。


そして、最後の一匹。
ルーティが魔術で足止めをし、ニトが打撃を加え、怯んだ隙をチェスターの矢が射止め、ロイドの剣から生じた衝撃破で完全に仕留めた。

魔物の襲撃を回避した面々は、構えを解くと安堵の息を吐いた。


「「「ま(ぁ)、こんな…」」」


途端に調和した音。
その声の主たちは、開いた口をそのままに顔を見合わせた。


「仲良きことは美しきことかな…ね」


小剣をチン、と鞘に収めたルーティがその姿を見て笑う。
未だ口を開いたままの三人は、被ってしまったことに恥を感じているのだろう、うっすらと紅い頬を振り払うようにそれぞれの武器を仕舞い込んだ。
そして、コホンと咳払いをして最初に口を開いたのはチェスター。


「ぐ、偶然だからな。たまたま同じ決め台詞だっただけだよ」
「そう」
「俺だって、かなり前からこう言ってたんだからな!」


笑いを含んだルーティの声に対し、決して真似などではない、と訴えるように言うのはロイド。


「でも仲が良いのは事実よね」


にこり、とやわらかな笑みで答えたのはニト。
その素直な姿に、ルーティは破顔した。


「アンタたちも、ニトみたいに素直になりなさいよ!美しいことなんだからいいでしょ」
「や…、ンな恥ずいこと改めて言うなよ…」
「姉さん、明らかに楽しんでるよな」
「あったりまえでしょ!」
「おい!」


勢いよく親指を立てたルーティに呆れ顔のチェスター。
ロイドは頭をガリガリと掻くと、魔物が落とした鉱石を拾い集め始めた。


「もしかしてルーティ、寂しいの?」


小首を傾げた表情でニトが問う。
その、あまりにすっとんきょうな単語に、チェスターが吹き出した。


「なっ、に言ってんだよ。あんなのごときっつーか、ルーティが寂しがること自体気味悪…」
「なんですってぇ〜?」
「ぎゃあ!」


倒れたチェスターを尻目に、ルーティはニトに顔を向けた。


「アンタはなんでそう思ったわけ?」
「だって、同じ台詞だから仲良いって言ったでしょ?それならルーティは仲間外れみたいだから、寂しいのかなって…」


ニトの率直な答えに、今度はルーティが頬を染めることとなった。
そんな変化を隠すように手で顔を覆ったルーティを、ニトは慌てた様子で見つめた。


「ど、どうしたの?」
「な、なんでもないわよ!」
「はっはーん。図星だな」
「へぇ〜、姉さんにも可愛いとこあんじゃねぇか」
「う、うるさいわね!!」
「ルーティ…」


二人からも指摘され、ルーティの頬はこれでもかというほど紅く染まった。
そんなルーティにニトは突然抱きついた。


「かわいいっ」
「ニ、ニト!?」
「かわいいかわいいかわいい!」
「ニトが壊れた!?」


もはや何が何だかわからないロイドとチェスターは、ニトが戻るまでそのままにしておくことにした。
そう思うやいなや、ニトは未だ紅いルーティの両手を取り、満面の笑みで次の言葉を発した。


「同じ決め台詞を作りましょう!」
「「「は!?」」」


今度はこの三人が息を揃えることとなった。
にこにこと、我ながらいい提案だといった表情で三人を見つめるニト。
対して三人は、微妙な面持ちでニトを見つめ返していた。


『寂しくないとは言ってないけど…』
『だからって、何で同じ…』
『は、恥ずいだろ…』


しかし、こうも純真無垢な笑顔のニトに逆らえる人間がこの場にはいないわけで。


「みんなが同じ台詞じゃ気味悪いことねぇか?」
「じゃ、四人が順に言ってくってのは?」
「なかなかいいんじゃない?」
「ふふっ、楽しいわね!」


結局、ニトの提案にのることとなるのであった。








鉱山。
魔物とぶつかる音が辺りに響き渡る。
炎が飛び交い、衝撃破が身体を揺らす。
鋭い線が空を斬り、影が地に落ちた。
魔物の襲撃を難なくやり過ごした四人は、慣れた手つきで武器を仕舞い込んだ。


「私たちの武器は…ヒーローであるが故持つことができる権力と!」
「馬鹿だから何やっても多少は許される甘やかしと!」
「お礼で貰った無駄アイテムを売り払った結果のお金…」
「やっぱやめようぜ」



結局、普段通りにいくこととなったそうな。






fin...




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