世界樹と始まり2‐カイ
カイが船に来る少し前の話。






‐‐‐




いたい…

いたい、くるしい…


『――カイ…』

負が、網膜に焼き付く…


『―カイ、私の声を聞け…』

世界、樹……

『左眼が痛むのならば、“私”の葉をすりつぶした液で印を描き、左眼を封じなさい さすればわずかだが痛みも和らぐだろう…』

…世界樹、何故此の様な能力を私にやったのだ。枷にしか成り得ないと言うのに…

『…それはお前自身で答えを導きなさい いつかは理解できる刻がくると私は知っている』

負を見て、私に浄化しろと言うのか。

『真の答えはお前のなかに… 己を知れ そして世界を広く見ろ すべてに可能性があると、どのように些細なことからも目を背けることなく信じていなさい…』

…全てに可能性…其れを私は信じられない…

『……己を忘れること、すなわちそれは死を意味する』

何の話だ…?

『常に己をもっていなさい すべてを信じられなくなっても、私を忘れても、お前自身だけは忘れるな』

世界樹を忘れるか。お前が私の全てだ。

『……カイ お前は私の愛すべき子だが、私の一部ではない 私とお前は異なる存在だ 混同するな』

違う…っ!私<ディセンダー>は世界樹の為に在る、外界で動く為の物質だと言う意味だ!大樹と欠片が同一の存在など、許される発言では無いだろう…っ

『……悲しいな やはりお前は外で世界を見てこい』

……私の仕事は、先の守り人の躾だろう。其の上、今更外界など…あれから何が変わったと言うのだ…

『皮肉だな …しかし刻は流れた 生き物たちの成長ぶりを私に教えてくれ』

変わった所が有れば、な…

『お前はすべてを感じてきなさい 喜びも幸せも、痛みも苦しみも…すべてを己の糧とし、すべてを受け入れるのだ さすれば左眼の意味も理解できよう』

……お前は私を苦しめる事が得意なのだな。

『私の世界を愛すがゆえだ』

世界を、か…。

『そう、世界をだ。動物も人間も植物も、空気や水、土やマナや感情でさえも愛すべきものだ それらを守るためにも、お前には左眼を理解してもらいたい』

世界の為ならば…

『もちろん、お前たちディセンダーも愛している』

…愛…

『お前も理解する刻がこよう 愛はいいぞ…世界が愛で溢れたならば、私はたまらなく幸せだ…』

……愛、か…

『……さて、もう夜が明ける 夢ばかり見ていては現実を生きられはせん お前はグラニデの地を踏み、その身にすべてを刻みつけてこい 目覚めたときからお前は一人の“人間”だ …では、しばらくの別れだ…私はいつも見ているからな…』

世界樹、私は、わた………――






「……先ずは封印だな。そして…奴達が乗る、バンエルティア号へ…」






fin...








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世界樹はいじわる。




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